パート勤続1年未満で傷病手当金は対象外?受給可否の判断ポイントと注意点まとめ

退職のミカタ

「パートで働き始めて1年未満だけど、病気やケガで働けなくなったら傷病手当金はもらえる?」そんな疑問をお持ちの方へ。結論から言うと、パート勤続1年未満でも傷病手当金を受け取れる可能性はあります。この記事を読めば、受給できるかの判断ポイント、満たすべき4つの条件、健康保険加入の重要性、勤続1年未満の方が特に注意すべき点、支給額や期間、不支給時の対応まで具体的にわかります。あなたの不安を解消し、適切な手続きを進めるためにお役立てください。

目次

傷病手当金 パート勤続1年未満でも受給できる可能性あり

「パートで働き始めてまだ1年経っていないけれど、病気やケガで長期間仕事を休むことになった…傷病手当金はもらえないのだろうか?」 このような不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。結論から言うと、パートタイマーの方で勤続期間が1年未満であっても、傷病手当金を受給できる可能性は十分にあります。

傷病手当金の受給資格において、雇用形態(正社員、契約社員、パート、アルバイトなど)や勤続期間の長さは、直接的な必須要件ではありません。大切なのは、定められた他の条件を満たしているかどうかです。この章では、まず傷病手当金制度の基本的な考え方と、勤続期間に関する誤解について解説します。

傷病手当金とは 働く人を支える公的な制度

傷病手当金は、健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガのために仕事を休み、給与(賃金)の支払いを受けられない場合に、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた公的な所得保障制度です。

主な目的は、療養中の収入減少を補い、安心して治療に専念できるようにすることです。加入している健康保険(協会けんぽや健康保険組合など)から支給されます。この制度があることで、万が一の病気やケガの際にも、一定期間、経済的な支援を受けることができます。

パートの勤続期間は傷病手当金の受給要件ではない

多くの方が誤解しやすい点ですが、傷病手当金の受給を開始するための要件として、「勤続期間が1年以上であること」は定められていません。

つまり、極端な例を挙げれば、健康保険に加入して1ヶ月しか経っていなくても、他の受給要件(後述します)をすべて満たしていれば、傷病手当金を受給できる可能性があるのです。「パートだから」「勤続期間が短いから」という理由だけで、最初から諦める必要はありません。

ただし、注意点もあります。傷病手当金を受給するためには、前提として勤務先の社会保険(健康保険)に加入している「被保険者」である必要があります。 また、退職後も継続して傷病手当金を受給したい場合(継続給付)には、「退職日までに継続して1年以上の被保険者期間」が必要となります。在職中に受給を開始する分には、この1年ルールは適用されません。これらの詳細については、後の章で詳しく解説します。

傷病手当金を受給するための4つの条件 パートタイマー向け解説

傷病手当金は、パートタイマーやアルバイトの方であっても、一定の条件を満たせば受給できる可能性があります。勤続期間の長さ自体は直接的な受給要件ではありません。重要なのは、これから説明する4つの条件をすべて満たしているかどうかです。パートタイマーの方がご自身の状況に当てはめて確認できるよう、具体的に解説していきます。

条件1 業務外の病気やケガによる療養

傷病手当金の対象となるのは、業務や通勤が原因ではない病気やケガのために療養が必要な場合です。仕事中や通勤途中の病気やケガについては、原則として労災保険(労働者災害補償保険)の給付対象となりますので、傷病手当金とは別の制度を利用することになります。

具体的には、以下のようなケースが傷病手当金の対象となり得ます。

  • 風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症(業務外での感染の場合)
  • うつ病などの精神疾患
  • 私生活での事故による骨折やケガ
  • がん治療のための入院や通院

ただし、美容整形手術など、病気とはみなされないものや、健康保険が適用されない療養は対象外となります。また、医師による「療養が必要である」という証明が不可欠です。自己判断で仕事を休んでいるだけでは、この条件を満たしません。

条件2 療養のため仕事に就けない状態

傷病手当金を受給するには、療養のためにこれまで従事していた仕事に就くことができない状態(労務不能)であると認められる必要があります。この「労務不能」かどうかは、単に病気やケガをしているという事実だけでなく、医師の意見や、ご本人の仕事内容などを考慮して総合的に判断されます。

例えば、デスクワーク中心のパートの方が利き手を骨折した場合と、立ち仕事や力仕事中心のパートの方が同じケガをした場合では、労務不能の判断が異なる可能性があります。ご自身の担当業務が、療養中の身体状況では遂行困難であると客観的に認められることが重要です。

軽い作業ならできる、短時間なら働けるといった場合でも、本来の業務ができない状態であれば、労務不能と判断されることがあります。最終的な判断は、申請を受けた健康保険組合や協会けんぽが行います。

条件3 連続3日間の待期期間を満たす

傷病手当金は、仕事を休んだ日から数えて連続した3日間(待期期間)が経過した後、4日目以降の休業日に対して支給されます。この最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、この期間については傷病手当金は支給されません。

待期期間は「連続して」3日間休むことがポイントです。途中で1日でも出勤すると、待期期間はリセットされ、再度休み始めた日からカウントし直しになります。

待期期間には、土日祝日や会社の公休日、有給休暇を取得した日も含まれます。給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。とにかく連続して3日間、労務不能により休業している実績が必要です。

曜日状態待期カウント傷病手当金支給対象
病気のため欠勤1日目×
病気のため欠勤2日目×
病気のため欠勤3日目(待期完成)×
病気のため欠勤〇(支給対象初日)
病気のため欠勤
公休日〇(休業していれば)
公休日〇(休業していれば)

上の表のように、月曜日から休み始めた場合、水曜日までの3日間が待期期間となり、木曜日以降の休業日が支給対象となります。待期期間が完成すれば、その後の休業日には土日祝日などの公休日も含まれます。

条件4 休業期間中に給与の支払いがない

傷病手当金は、病気やケガで働けず、給与収入が得られない間の生活を保障するための制度です。そのため、原則として、休業している期間について勤務先から給与が支払われていないことが条件となります。

ただし、例外もあります。休業期間中に給与が支払われたとしても、その額が傷病手当金の支給額よりも少ない場合は、その差額分の傷病手当金が支給されます。

例えば、傷病手当金の日額が5,000円の人が、会社から休業手当などとして1日あたり3,000円の支払いを受けた場合、差額の2,000円が傷病手当金として支給されることになります。給与が傷病手当金の額以上支払われている場合は、その日の傷病手当金は支給されません。

なお、有給休暇を取得した日については、通常、給与(賃金)が支払われているため、その日は傷病手当金の支給対象とはなりません。待期期間中に有給休暇を使用することは可能ですが、支給対象期間に有給休暇を使うと、その日の傷病手当金は受け取れない点に注意が必要です。

これら4つの条件をすべて満たすことで、パートタイマーの方も傷病手当金を受給できる可能性があります。次の章では、これらの条件を満たす上で大前提となる「健康保険の被保険者であること」について詳しく見ていきましょう。

重要なポイント 健康保険の被保険者であること

傷病手当金を受給するための大前提として、あなたが勤務先の健康保険(社会保険)の被保険者である必要があります。パートやアルバイトといった雇用形態や、勤続期間が1年未満であるかどうか以前に、この点をまず確認することが非常に重要です。

傷病手当金は、会社員や一定の条件を満たすパート・アルバイトなどが加入する「被用者保険」と呼ばれる健康保険の制度の一部であり、主に病気やケガで働けなくなった被保険者本人とその家族の生活を保障することを目的としています。

社会保険(協会けんぽ 組合健保など)に加入しているか確認

傷病手当金の対象となるのは、主に以下のいずれかの健康保険に加入している方です。

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ):主に中小企業の従業員が加入
  • 組合管掌健康保険(組合健保):主に大企業の従業員や同業種の企業が集まって設立した健康保険組合
  • 共済組合:公務員や私立学校教職員などが加入

パートやアルバイトの方でも、労働時間や日数などの一定の要件を満たせば、これらの社会保険に加入することになります。ご自身がどの健康保険に加入しているかは、お手持ちの健康保険証(被保険者証)で確認できます。保険証には「保険者名称」として、加入している健康保険組合や協会けんぽの名前が記載されています。

もし、ご自身の社会保険加入状況が不明な場合は、勤務先の担当部署(人事・総務など)に確認してみましょう。給与明細の控除欄に「健康保険料」の記載があるかどうかも、加入状況を知る手がかりになります。

国民健康保険は傷病手当金の対象外

自営業者やフリーランス、退職者、そして社会保険の加入要件を満たさないパート・アルバイトの方などが加入する「国民健康保険(国保)」には、原則として傷病手当金の制度はありません。

そのため、国民健康保険の被保険者である場合は、残念ながら病気やケガで働けなくなっても、傷病手当金を受給することはできません。この点は、社会保険に加入している方との大きな違いとなりますので、十分にご注意ください。

健康保険の種類主な加入者傷病手当金の有無
社会保険(協会けんぽ、組合健保、共済組合など)会社員、公務員、一定の要件を満たすパート・アルバイトなどあり
国民健康保険(市町村国保、国保組合)自営業者、フリーランス、無職の方、社会保険に加入していないパート・アルバイトなど原則なし
(※一部、条例等で独自の給付制度を設けている市町村や国保組合も存在しますが、一般的ではありません)

このように、傷病手当金の受給を考える上で、まずはご自身が社会保険の被保険者であるかどうかの確認が不可欠です。パートで勤続1年未満であっても、社会保険に加入していれば、他の受給条件を満たすことで傷病手当金を受け取れる可能性があります。

パート勤続1年未満の方が傷病手当金で特に注意すべき点

パートとして働き始めてまだ日が浅い、勤続1年未満という状況で病気やケガをしてしまった場合、傷病手当金がもらえるのかどうか、特に不安に感じることでしょう。結論から言うと、パートであっても勤続期間が1年未満であること自体が、傷病手当金の受給を妨げる理由にはなりません。しかし、いくつか注意すべき重要なポイントがあります。ここでは、パート勤続1年未満の方が傷病手当金を考える上で、特に押さえておきたい点について詳しく解説します。

健康保険の加入状況と被保険者期間

傷病手当金を受給するための大前提として、ご自身が勤務先の社会保険(健康保険)に被保険者として加入している必要があります。パート・アルバイトという雇用形態であっても、一定の条件を満たせば社会保険への加入義務が生じます。

勤続期間が短い場合、以下の点を確認しましょう。

  • 社会保険への加入手続きが完了しているか: 入社直後などは、手続きがまだ完了していない可能性も考えられます。ご自身の健康保険証が手元にあるか、または会社に加入状況を確認しましょう。保険証には、加入している健康保険組合(協会けんぽ、組合健保など)の名称や、ご自身の記号・番号、資格取得年月日(加入日)が記載されています。
  • 被保険者期間はいつからか: 傷病手当金の支給額は、原則として支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額を基に計算されます。しかし、加入期間が12か月に満たない場合は、別の計算方法が用いられます。具体的には、「支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額」と、「当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額」のいずれか低い方の額を使用して計算されます。勤続1年未満の方は、この計算方法が適用される可能性が高いことを念頭に置いておきましょう。

まずは、ご自身が健康保険の被保険者であること、そしていつから加入しているのかを正確に把握することが第一歩となります。

退職後の継続給付には1年以上の加入期間が必要

在職中に傷病手当金を受給する場合、勤続期間の長さは問われません。しかし、療養のために退職した後も傷病手当金の支給を受け続けたい場合(継続給付)は、条件が異なります。

退職後の継続給付を受けるためには、以下の2つの条件を両方満たす必要があります。

  1. 退職日(資格喪失日の前日)までに「継続して1年以上」の被保険者期間があること。(※任意継続被保険者や共済組合の期間は含まれません。あくまで加入していた健康保険の被保険者期間です。)
  2. 資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受けられる状態(待期期間満了後の労務不能状態)であること。

つまり、パートで勤続1年未満の方が退職する場合、原則として退職後の継続給付は受けられないということになります。これは非常に重要なポイントですので、療養が長引きそうで退職も考えている場合は、ご自身の被保険者期間を必ず確認してください。

もし、現在の職場で1年未満でも、それ以前に他の会社で健康保険に加入しており、空白期間なく(または一定の短い期間内に)現在の職場の健康保険に加入している場合は、通算して1年以上となる可能性もあります。ただし、加入している健康保険組合が変わっている場合などは取り扱いが異なる可能性があるため、詳細は加入している健康保険組合や協会けんぽに確認することをおすすめします。

短時間労働者の社会保険加入要件もチェック

そもそもパートタイマーの方が傷病手当金の対象となる社会保険(健康保険)に加入するためには、一定の労働条件を満たす必要があります。勤続期間が短いから加入できないのではなく、労働時間や賃金などの要件を満たしているかが重要です。

特に、週の所定労働時間や月額賃金が正社員よりも少ない短時間労働者の場合、以下の要件(2024年10月時点の主なもの)を確認しましょう。ご自身の働き方がこれらの基準を満たしているかどうかが、傷病手当金受給の前提となる社会保険加入の可否を左右します。

項目主な要件
勤務先の従業員数従業員数101人以上の企業(※2024年10月からは51人以上の企業に拡大)
週の所定労働時間20時間以上
月額賃金88,000円以上(※残業代、賞与、通勤手当などを除く)
雇用期間の見込み2か月を超える雇用の見込みがあること
学生でないこと学生ではないこと(※夜間や定時制の学生などは加入対象となる場合があります)

(注)上記の要件は一般的なものであり、詳細は変更される可能性があります。また、従業員数が少ない企業(100人以下、2024年10月以降は50人以下)であっても、労使の合意があれば任意で加入できる場合があります。ご自身の状況が不明な場合は、勤務先に確認しましょう。

これらの要件を満たしていない場合は、残念ながら社会保険(健康保険)に加入できず、傷病手当金の対象にもなりません。ご自身の労働契約や給与明細などを確認し、加入要件を満たしているか把握しておくことが大切です。

以上のように、パート勤続1年未満であっても傷病手当金を受給できる可能性は十分にありますが、「健康保険への加入」「退職後の継続給付の条件」「社会保険の加入要件」といった点には特に注意が必要です。ご自身の状況を正確に把握し、不明な点は勤務先や加入している健康保険組合、協会けんぽに確認するようにしましょう。

傷病手当金はいくら いつまで もらえるのか

病気やケガで仕事を休むことになった際、生活を支える傷病手当金ですが、「具体的にいくらもらえるのか」「いつまでもらえるのか」は非常に気になるところです。特にパートで勤続1年未満の場合、計算方法や期間について不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。ここでは、傷病手当金の支給額の計算方法と支給期間について、分かりやすく解説します。

傷病手当金の支給額 計算方法を解説

傷病手当金の1日あたりの支給額は、原則として以下の計算式で算出されます。

1日あたりの支給額 = (支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額) ÷ 30日 × (2/3)

「標準報酬月額」とは、社会保険料の計算の基となるもので、毎月の給与などの報酬を一定の範囲(等級)で区切ったものです。給与明細やねんきん定期便などで確認できます。

しかし、パートで働き始めて間もないなど、健康保険の加入期間(被保険者期間)が支給開始日以前に12ヶ月に満たない場合は、計算方法が異なります。この場合は、以下のいずれか少ない方の額を用いて計算します。

計算に用いる額(A)計算に用いる額(B)
支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額加入している健康保険の前年度9月30日時点における全被保険者の標準報酬月額の平均額(協会けんぽの場合)
※組合健保の場合は、その組合が定めた額となります。

例えば、協会けんぽに加入していて、加入期間が5ヶ月の場合、その5ヶ月間の標準報酬月額の平均額(A)と、前年度の協会けんぽ全被保険者の標準報酬月額の平均額(B)を比較し、低い方の額を使って1日あたりの支給額を計算することになります。

これは、加入してすぐに高額な傷病手当金を受け取ることを防ぐための措置です。ご自身の正確な支給額を知りたい場合は、加入している健康保険組合または協会けんぽに問い合わせるのが確実です。

傷病手当金の支給期間 最長1年6か月

傷病手当金が支給される期間は、同一の病気やケガに関して、支給を開始した日から通算して最長1年6か月です。

ここで重要なのは「通算して」という点です。以前は、支給開始日から暦の上で1年6か月が経過すると、途中に出勤した期間があっても支給は終了していました。しかし、令和4年1月1日の法改正により、実際に傷病手当金が支給された日数を合計して1年6か月に達するまで支給されるように変更されました。

つまり、療養のために仕事を休み傷病手当金を受け取っていた期間の途中で、一時的に回復して仕事に復帰し、給与が支払われた期間があったとします。その復帰していた期間は、1年6か月の支給期間にはカウントされません。その後、同じ病気やケガが再発して再び仕事を休むことになった場合、まだ支給日数が1年6か月に達していなければ、残りの期間について傷病手当金を受け取ることができます。

支給が開始されるのは、連続する3日間の待期期間を満たした翌日(4日目)からです。この待期期間には、有給休暇や土日祝日も含まれます。

ただし、支給期間が通算して1年6か月に達すると、たとえ療養が続いていたとしても、その病気やケガに対する傷病手当金の支給は終了します。別の病気やケガで新たに療養が必要になった場合は、改めて受給要件を満たせば、新たな支給期間で傷病手当金を受給できる可能性があります。

長期にわたる療養が必要な場合、この支給期間のルールを理解しておくことは、安心して治療に専念するためにも非常に重要です。

パート勤続1年未満で傷病手当金が不支給になった場合の対応

傷病手当金を申請したものの、「不支給」という結果になってしまうケースも残念ながら存在します。特にパートで勤続1年未満の場合、加入期間などの要件で不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、不支給決定が出たからといって、すぐに諦める必要はありません。ここでは、不支給になった場合に考えられる対応策を具体的に解説します。

不支給決定通知書の内容を確認する

まず、加入している健康保険組合や協会けんぽから送られてくる「不支給決定通知書」の内容を必ず確認しましょう。この通知書には、なぜ傷病手当金が支給されないのか、その具体的な理由が記載されています。

考えられる主な不支給理由としては、以下のようなものがあります。

  • 傷病手当金の支給要件(4つの条件)を満たしていないと判断された
    • 業務外の病気やケガによる療養と認められなかった(労災保険の対象と判断された場合など)
    • 療養のため仕事に就けない状態(労務不能)と認められなかった(症状が軽い、自己都合による休みと判断された場合など)
    • 連続する3日間の待期期間が完成していなかった
    • 休業した期間中に、傷病手当金の額を超える給与が支払われていた
  • そもそも健康保険の被保険者ではなかった、または申請時点で被保険者資格を喪失していた
  • 申請書類の記入漏れや、添付書類(医師の証明など)に不備があった

どの要件を満たさなかったのか、具体的な理由を正確に把握することが、次のステップに進むための第一歩です。パート勤続1年未満という状況では、健康保険への加入期間が短いこと自体は直接的な不支給理由にはなりませんが、加入手続きの遅れや認識違いがないかなども念のため確認するとよいでしょう。ご自身の状況と通知書の理由を照らし合わせて、不明な点があれば、勤務先の人事担当者や加入している健康保険組合・協会けんぽに問い合わせてみましょう。

審査請求という不服申し立て制度

不支給決定通知書に記載された理由に納得がいかない場合、「審査請求」という不服申し立てを行うことができます。これは、健康保険法に基づく正式な手続きで、決定内容の見直しを求めるものです。

審査請求は、不支給決定があったことを知った日の翌日から起算して原則として3か月以内に、地方厚生(支)局内に設置されている社会保険審査官に対して行います。郵送での提出も可能です。

審査請求を行う際の重要なポイントは以下の通りです。

  • 期限を厳守する: 3か月という期限は非常に重要です。特別な理由がない限り、期限を過ぎると請求できなくなりますので注意しましょう。
  • 書面で請求する: 「審査請求書」という所定の様式、または任意の書面に必要事項を記載して提出します。請求人の氏名・住所、保険者(健康保険組合名や協会けんぽ)、決定内容、請求の趣旨と理由などを明記する必要があります。様式は厚生労働省のウェブサイトなどから入手できます。
  • 不服の理由と根拠を具体的に示す: なぜ不支給決定が妥当でないと考えるのか、その具体的な理由を明確に記載します。また、その主張を裏付ける証拠(医師の意見書、診断書、勤務先の証明、給与明細など)があれば、審査請求書に添付して提出すると、より説得力が増します。

社会保険審査官は提出された書類などを基に審査を行い、決定(認容、棄却、却下)をします。この社会保険審査官の決定にも不服がある場合は、決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内に、厚生労働省内に設置されている社会保険審査会に対して「再審査請求」を行うことができます。

審査請求の手続きは複雑に感じるかもしれませんが、決定に疑問がある場合は泣き寝入りせず、権利として認められている制度の活用を検討しましょう。手続きについて不明な点や不安な点があれば、社会保険労務士などの専門家や、地方厚生(支)局に相談することも有効です。

他の利用できる公的支援制度を探す

傷病手当金が不支給となった場合や、審査請求の結果を待つ間、あるいは傷病手当金の支給期間(最長1年6か月)が終了した後も、病気やケガの影響で生活に困窮する状況が続く場合には、傷病手当金以外の公的な支援制度の利用を検討しましょう。パート勤続1年未満という状況でも利用できる可能性がある制度は複数存在します。

以下に、生活を支える可能性のある代表的な制度と、主な相談窓口をまとめました。

制度名制度の概要主な相談窓口
生活困窮者自立支援制度経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することが困難になるおそれのある方に対し、専門の支援員が相談に応じ、個々の状況に合わせた支援プランを作成し、他の専門機関と連携して自立に向けた支援を行います。住居確保給付金(家賃相当額の支給)などの支援もあります。お住まいの自治体の福祉担当窓口、または自治体が設置する自立相談支援機関
生活福祉資金貸付制度低所得者世帯、障害者世帯、高齢者世帯等に対し、経済的な自立や生活の安定を目的として、無利子または低利子で資金の貸付けを行う制度です。生活再建までの間の生活費(総合支援資金)や、緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合の少額費用(緊急小口資金)など、様々な種類の貸付があります。お住まいの市区町村社会福祉協議会
雇用保険(基本手当)病気やケガが回復し、働く意欲と能力があるにもかかわらず、仕事に就くことができない場合に、次の仕事を見つけるまでの間の生活を支える給付金(いわゆる失業保険)です。受給には、離職日以前の一定期間に雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上(特定理由離職者などは6か月以上)あることなどの要件があります。パート勤続1年未満でも、それ以前の職歴と通算できる場合があります。ハローワーク(公共職業安定所)
障害年金病気やケガによって、法令で定められた障害等級(1級・2級・3級)に該当する程度の障害の状態になり、日常生活や就労に著しい制限を受ける場合に支給される年金です。原則として、その病気やケガで初めて医師の診療を受けた日(初診日)から1年6か月を経過した日(障害認定日)に請求できます。年金事務所、街角の年金相談センター、または社会保険労務士
労災保険(労働者災害補償保険)業務上の事由または通勤による病気、ケガ、障害、死亡に対して、労働者やその遺族のために必要な保険給付を行う制度です。もし、不支給理由が「業務上の傷病と判断されたため」であれば、労災保険の申請を検討する必要があります。労働基準監督署、または勤務先の担当者

これらの制度には、それぞれ利用するための要件や手続きが定められています。まずは一人で抱え込まず、お住まいの自治体の福祉窓口や社会福祉協議会、ハローワーク、年金事務所といった公的な相談窓口に連絡し、ご自身の状況を説明して、利用できる支援がないか相談してみることが重要です。

傷病手当金が不支給という結果は大変残念なことですが、生活を支えるためのセーフティネットは他にも用意されています。諦めずに情報を集め、利用できる制度を活用していきましょう。

まとめ

パートで勤続1年未満であっても、傷病手当金を受給できる可能性は十分にあります。受給の可否は勤続期間ではなく、協会けんぽや組合健保といった社会保険の被保険者であることが大前提です(国民健康保険は対象外)。その上で、「業務外の病気やケガ」「仕事に就けない状態」「連続3日間の待期期間」「休業中に給与がない」という4つの条件を満たせば、勤続期間に関わらず申請可能です。ただし、退職後も継続して受給したい場合は、1年以上の被保険者期間が必要となる点に注意しましょう。万が一不支給となった場合は、不支給決定通知書を確認し、審査請求を検討することも可能です。

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