退職を決意したものの、上司への伝え方に悩んでいませんか?この記事を読めば、円満退職を成功させるための報告手順、切り出し方、最適なタイミング、理由別の例文、注意点まで全て分かります。失敗しないための準備から、引き止めへの対処法、退職願の準備まで、具体的な方法が明確になります。正しい伝え方を実践すれば、トラブルなくスムーズな退職報告が可能です。具体的なステップと例文で、あなたの退職をサポートします。
退職を上司に伝える前に準備すべきこと
退職を決意したら、すぐに上司に伝えるのではなく、円満な退職に向けて事前にいくつか準備しておくべきことがあります。しっかり準備をすることで、上司への報告がスムーズに進み、トラブルを未然に防ぐことができます。焦って行動する前に、まずは以下の点を一つずつ確認・整理していきましょう。
退職意思の最終確認
上司に伝える前に、本当に退職するのか、自分の意思を最終確認しましょう。「隣の芝生は青く見える」という言葉があるように、一時的な感情や勢いで決断していないか、冷静に考える時間を持つことが大切です。退職を決意した理由、現職での不満点、将来のキャリアプランなどを改めて見つめ直し、退職が最善の選択であるか自問自答してみてください。
以下の点を考慮すると、より客観的に判断しやすくなります。
- 退職したい根本的な理由は何なのか? (例: 仕事内容、人間関係、待遇、キャリアチェンジ)
- その理由は、現職の部署異動や改善要求などで解決できないか?
- 転職によって、その理由が本当に解消されるのか?
- 退職後の具体的なプラン(転職先、キャリアパス)は明確か?
- 退職することによるメリットとデメリットは何か?
ここで意思が固まっていれば、上司からの引き止めにあった際にも、自信を持って自分の考えを伝えることができます。逆に、迷いがある状態で伝えてしまうと、説得に応じてしまい、後で後悔する可能性もあります。
会社の就業規則を確認する
退職に関する手続きやルールは、会社ごとに定められています。必ず事前に就業規則を確認し、自社のルールを把握しておきましょう。特に以下の項目は重要です。
確認項目 | 主な内容・確認ポイント |
---|---|
退職の申し出時期 | 「退職希望日の〇ヶ月前までに申し出ること」といった規定を確認します。法律(民法627条)では期間の定めのない雇用契約の場合、退職の申し出から2週間で雇用契約が終了するとされていますが、一般的には就業規則の規定が優先されることが多いです。円満退職のためにも、就業規則に従うのが基本です。 |
退職届の要否・書式 | 退職願や退職届の提出が必要か、指定の書式があるかを確認します。提出先(直属の上司、人事部など)も確認しておきましょう。 |
有給休暇の消化 | 残っている有給休暇の消化に関するルールを確認します。退職日までにすべて消化できるか、会社による買い取り制度があるかなどを把握しておくと、退職日の調整に役立ちます。 |
退職金の規定 | 勤続年数などに応じて退職金が支給されるか、支給条件や計算方法を確認します。 |
就業規則は、社内ポータルサイトや共有フォルダに保管されていることが多いですが、見当たらない場合は人事部や総務部に確認しましょう。ただし、退職を悟られないよう、慎重に行動する配慮も必要かもしれません。
退職希望日を決める
就業規則で定められた申し出時期や、自身の業務の引き継ぎに必要な期間、有給休暇の残日数などを考慮して、具体的な退職希望日を設定しましょう。転職先が決まっている場合は、その入社日も重要な要素になります。
退職希望日を決める際の考慮事項:
- 就業規則の通知期間: 最低限守るべき期間です。
- 引き継ぎ期間: 担当業務の内容や量、後任者の有無によって必要な期間は異なります。余裕を持ったスケジュールを考えましょう。一般的には1ヶ月~2ヶ月程度を見込むことが多いです。
- 有給休暇の消化: 残っている有給休暇をいつ、どのように消化したいかを計画に入れます。
- 業務の繁忙期: 可能であれば、会社の繁忙期やプロジェクトの重要な時期を避ける配慮があると、より円満に進めやすくなります。
- 転職先の入社日: 転職先が決まっている場合は、入社日から逆算して退職日を調整する必要があります。
- 賞与(ボーナス)の支給時期: 賞与の支給条件(支給日在籍など)を確認し、受け取りたい場合は支給日以降を退職日に設定することも検討します。
ここで決めるのはあくまで「希望日」です。最終的な退職日は、上司と相談の上で決定することになりますが、事前に自分の希望を明確にしておくことで、交渉を進めやすくなります。
上司に伝える退職理由を整理する
上司に退職を伝える際、必ず聞かれるのが「退職理由」です。事前にどのように伝えるかを整理しておくことで、スムーズかつ建設的な話し合いができます。
退職理由を整理する際のポイント:
- 正直かつ簡潔に: 嘘をつく必要はありませんが、詳細をすべて話す必要もありません。
- ポジティブな表現を心がける: 「〇〇が不満だから辞める」というネガティブな伝え方ではなく、「〇〇に挑戦したいから」「〇〇を実現したいから」といった前向きな理由を中心に伝える方が、相手も受け入れやすくなります。
- 会社の不満は避ける: 給与や待遇、人間関係など、会社への不満を直接的な退職理由として挙げるのは、円満退職の妨げになる可能性があります。たとえそれが本音であっても、個人的な事情やキャリアアップなど、差し障りのない理由に言い換える工夫も検討しましょう。
- 引き止められにくい理由を選ぶ: キャリアチェンジ、家庭の事情(家族の介護など)、体調不良などは、比較的引き止められにくい理由とされています。ただし、事実と異なる理由を伝えることにはリスクも伴うため、慎重に判断しましょう。
本音の退職理由がネガティブなものであっても、それをそのまま伝えるのではなく、「一身上の都合」や「新たな分野への挑戦」といった表現に留めるのが一般的です。感謝の気持ちとともに、前向きな理由を伝えることで、上司も納得しやすくなり、円満な退職につながります。
引き継ぎの準備を始める
退職を伝える前から、可能な範囲で引き継ぎの準備を始めておくと、退職までのプロセスがスムーズに進みます。正式な退職日が決まり、後任者が決定してから本格的な引き継ぎを行いますが、事前の準備が後々の負担を大きく軽減します。
報告前にできる準備の例:
- 担当業務のリストアップ: 自分が担当している業務をすべて洗い出し、一覧にします。日次・週次・月次業務、進行中のプロジェクトなどを整理しましょう。
- 業務マニュアルや資料の整理・作成: 担当業務の手順書や関連資料を整理し、不足しているものがあれば作成を開始します。ファイル名やフォルダ構成を分かりやすくしておくことも重要です。
- 関係者リストの作成: 社内外の業務関係者の連絡先や、担当業務との関わりなどをまとめておくと、後任者がスムーズに業務を引き継げます。
- データの整理: 自分のPCや共有フォルダ内にある業務関連データを整理し、誰が見ても分かるようにしておきます。
これらの準備を事前に行っておくことで、退職を伝えた後の引き継ぎ期間を有効に使うことができ、会社への貢献姿勢を示すことにも繋がります。「立つ鳥跡を濁さず」という言葉があるように、最後まで責任を持って業務に取り組む姿勢が、円満退職の鍵となります。
上司への退職の伝え方 基本的な流れとマナー
退職を決意したら、次はいよいよ上司へ報告するステップです。円満退職を実現するためには、伝え方の手順とマナーを守ることが非常に重要になります。感情的になったり、一方的な伝え方になったりすると、思わぬトラブルに発展しかねません。ここでは、上司への退職報告をスムーズに進めるための基本的な流れと、押さえておくべきマナーを5つのステップに分けて詳しく解説します。
ステップ1 まずは直属の上司にアポイントを取る
退職の意思を最初に伝えるべき相手は、必ず直属の上司です。同僚や他部署の上司、人事部などに先に話してしまうと、上司の耳に間接的に入ってしまい、心証を損ねる可能性があります。まずは直属の上司に、個別に話すための時間を設けてもらうようアポイントを取りましょう。重要な話であるため、立ち話や他の業務のついでに伝えるのは避け、会議室など他の人に聞かれない場所で、1対1で話せる時間を確保することがマナーです。
アポイントを取る際は、「退職の話」と直接伝えるのではなく、「ご相談したいことがある」「お話したいことがある」といった形で依頼するのが一般的です。上司の都合の良い日時をいくつか伺い、調整しましょう。
メールでのアポイント依頼例文
件名:【〇〇(自分の氏名)】ご相談のお願い
〇〇部長(上司の役職・氏名)
お疲れ様です。〇〇(自分の氏名)です。
急なお願いで恐縮ですが、〇〇部長に直接ご相談したいことがございます。
つきましては、下記の日程のうち、いずれか15分〜30分ほどお時間をいただくことは可能でしょうか。
- 〇月〇日(〇) 〇時~〇時
- 〇月〇日(〇) 〇時~〇時
- 〇月〇日(〇) 〇時~〇時
上記以外でも、〇〇部長のご都合の良い日時がございましたら、調整いたします。
お忙しいところ申し訳ありませんが、ご検討いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
署名
————————————————–
〇〇(自分の氏名)
所属部署名
内線番号:XXXX
メールアドレス:XXXX@XXXX.co.jp
————————————————–
口頭でのアポイント依頼
上司が比較的忙しくなさそうなタイミングを見計らい、直接声をかけてアポイントを取る方法もあります。その際も、周囲に人がいない状況を選ぶ配慮が必要です。
「〇〇部長、今少しよろしいでしょうか? 近いうちにご相談したいことがありまして、15分ほどお時間をいただけないでしょうか?」
「〇〇課長、お忙しいところ恐縮ですが、個人的にお話ししたいことがございます。〇日か〇日あたりで、少しお時間をいただくことは可能でしょうか?」
このように、まずは時間を確保してもらうことに集中しましょう。
ステップ2 退職意思を明確に伝える 切り出し方
アポイントを取り、上司と二人きりになったら、いよいよ退職の意思を伝えます。ここは非常に重要な場面ですので、曖昧な言い方は避け、はっきりと退職の意思を伝えることが大切です。「辞めようか迷っている」といった相談ではなく、「退職を決意した」という報告の形を取りましょう。
切り出す際は、まず時間を取っていただいたことへの感謝を述べ、クッション言葉を添えてから本題に入ると丁寧な印象になります。
(例)
「本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。」
「突然このようなお話で大変恐縮なのですが、この度、退職させていただきたく、ご報告にまいりました。」
「私事で大変申し訳ないのですが、一身上の都合により、退職させていただきたいと考えております。」
このように、まずは結論である「退職の意思」を明確に伝えましょう。
ステップ3 退職理由を伝える
退職意思を伝えると、ほぼ確実に上司から理由を尋ねられます。退職理由は正直に伝えることが基本ですが、伝え方には工夫が必要です。特にネガティブな理由の場合、会社の不満や人間関係への批判などをストレートにぶつけるのは、円満退職の妨げになる可能性があるため避けましょう。
ポジティブな理由の場合
転職によるキャリアアップ、新しい分野への挑戦、資格取得のための学習、家業を継ぐなど、前向きな理由は比較的伝えやすいでしょう。ただし、転職先が決まっている場合でも、具体的な会社名や待遇などを詳細に話す必要はありません。あくまで自身の目標や将来の展望に焦点を当てて説明するのがスマートです。
(例)
「以前から興味のあった〇〇分野への挑戦を決意し、転職活動を進めておりました。この度、ご縁がありまして、〇〇業界の企業から内定をいただきました。」
「〇〇の資格取得に専念するため、一度職務から離れる決断をいたしました。」
「家業を継ぐことになり、実家に戻る必要が出てまいりました。」
ネガティブな理由の場合の伝え方の工夫
給与や待遇、労働時間、人間関係、仕事内容への不満などが本音の理由であっても、そのまま伝えるのは得策ではありません。不満を述べても状況が改善される可能性は低く、むしろ感情的なしこりを残してしまう可能性があります。
このような場合は、「一身上の都合」という表現を使うのが最も無難です。もし具体的な理由を求められた場合でも、個人的な事情(家庭の事情、体調面など)に触れる程度に留め、会社や特定の個人への批判と受け取られないような配慮を心がけましょう。
(例)
「(詳細を問われた場合)家庭の事情により、現在の働き方を続けることが難しくなりました。詳細については、個人的なことになりますので、控えさせていただけますでしょうか。」
「(体調面の場合)自身の体調を考慮し、今後のキャリアについて考えた結果、退職を決意いたしました。」
嘘をつく必要はありませんが、円満な退職のためには、伝え方を工夫することが重要です。
ステップ4 退職希望日を伝える
退職理由を伝えたら、次に退職希望日を伝えます。事前に会社の就業規則を確認し、退職に関する規定(例:退職希望日の1ヶ月前までに申し出ることなど)を把握しておきましょう。法律上は退職日の2週間前までの申し出で退職可能ですが、円満な退職とスムーズな引き継ぎのためには、就業規則に従い、十分な期間(一般的には1ヶ月~2ヶ月程度)を設けるのがマナーです。
退職希望日は、一方的に「この日に辞めます」と宣言するのではなく、「〇月〇日をもって退職させていただきたいと考えております」といった形で、相談する姿勢で伝えるのが望ましいでしょう。業務の状況や引き継ぎに必要な期間を考慮し、上司と相談の上で最終的な退職日を決定します。
(例)
「会社の就業規則に則り、〇月〇日をもって退職させていただきたいと考えております。」
「引き継ぎに必要な期間も考慮し、〇月末での退職を希望しておりますが、業務の状況に合わせてご相談させていただけますでしょうか。」
ステップ5 感謝の気持ちと今後の協力姿勢を示す
退職の意思、理由、希望日を伝えたら、最後にこれまでの感謝の気持ちと、退職日まで責任を持って業務に取り組む姿勢、そして引き継ぎに協力する意思を伝えましょう。これが円満退職に向けた最後の重要なステップです。
たとえネガティブな理由での退職であっても、お世話になったことへの感謝を伝えることで、上司との関係性を良好に保ちやすくなります。また、最終出社日までプロフェッショナルとして職務を全うする姿勢を示すことは、社会人としての信頼を維持するために不可欠です。
(例)
「これまで〇〇部長には大変お世話になり、多くのことを学ばせていただきました。心より感謝しております。」
「退職日までは、これまで通り責任を持って業務に取り組みます。後任の方への引き継ぎも、資料作成を含め、しっかりと行わせていただきますので、ご安心ください。」
「残り短い期間ではございますが、最後まで会社に貢献できるよう努めますので、どうぞよろしくお願いいたします。」
このように、感謝と誠意を示すことで、上司もあなたの退職を前向きに受け止めやすくなり、円満な退職へと繋がります。
退職を伝えるベストなタイミングはいつか
退職の意思を固めた後、次に悩むのが「いつ上司に伝えるべきか」というタイミングの問題です。円満退職を実現するためには、法律や会社のルール、そして周囲への配慮を踏まえた適切なタイミングで報告することが非常に重要になります。早すぎても遅すぎても、思わぬトラブルを招く可能性があるため、慎重に判断しましょう。
ここでは、退職を伝えるベストなタイミングを見極めるためのポイントを解説します。
法律と就業規則から見る報告時期
退職の申し出時期に関して、まずは法律と会社の就業規則を確認することが基本です。
法律(民法第627条第1項)では、期間の定めのない雇用契約(正社員など)の場合、退職の意思表示から2週間が経過すれば雇用契約は終了すると定められています。つまり、法律上は退職希望日の2週間前までに伝えれば良いことになります。
しかし、多くの企業では就業規則で「退職希望日の1ヶ月前まで」や「退職希望日の2ヶ月前まで」といった独自のルールを定めています。円満な退職を目指す上では、この就業規則の規定を尊重することが一般的です。なぜなら、会社側も後任者の採用や業務の引き継ぎ準備に一定の期間が必要だからです。
まずは、ご自身の会社の就業規則を確認しましょう。社内ポータルサイトに掲載されていたり、入社時に配布された書類に含まれていたりすることが多いですが、見当たらない場合は人事部や総務部に確認してみてください。
根拠 | 定められている期間(目安) | ポイント |
---|---|---|
法律(民法) | 退職意思表示から2週間後 | 期間の定めのない雇用契約の場合の最低ライン。 |
就業規則 | 退職希望日の1ヶ月前〜3ヶ月前が多い | 円満退職のためには、原則として就業規則に従うべき。必ず自社の規定を確認する。 |
就業規則の規定が法律よりも長い期間を定めている場合でも、一般的には就業規則に従うことが推奨されます。これは、会社との良好な関係を保ち、スムーズな退職手続きを進めるための配慮と言えるでしょう。
業務の繁忙期は避ける配慮も
法律や就業規則の規定を守ることは大前提ですが、それに加えて業務の繁忙期を避けて退職を伝えるという配慮も、円満退職のためには大切な要素です。
上司も人間です。自身や部署が非常に忙しい時期に退職の報告を受けると、冷静に話を聞く余裕がなかったり、感情的になってしまったりする可能性も否定できません。また、繁忙期は引き継ぎのための時間を十分に確保することも難しくなりがちです。
具体的には、以下のような時期は避けるのが賢明でしょう。
- 年度末や四半期末、決算期
- 大規模なプロジェクトの納期直前や佳境の時期
- 業界特有の繁忙シーズン(例:小売業の年末商戦、不動産業の引っ越しシーズンなど)
- チームメンバーの多くが休暇を取得する時期(例:ゴールデンウィーク、お盆、年末年始)
もちろん、完全に繁忙期を避けるのが難しい場合もあります。しかし、可能な範囲で、比較的落ち着いている時期を選んでアポイントを取ることで、上司も時間的・精神的な余裕を持ってあなたの話を聞き、今後の手続きについて建設的な話し合いができる可能性が高まります。
自分の業務だけでなく、部署全体の状況や上司のスケジュールも考慮に入れる視点を持つことが、円滑なコミュニケーションにつながります。
引き継ぎ期間を考慮したタイミング設定
退職日までに後任者へ業務をしっかりと引き継ぐことは、社会人としての重要な責務です。十分な引き継ぎ期間を確保できるタイミングで退職を伝えることが、円満退職の鍵となります。
就業規則で「1ヶ月前」と定められていても、担当業務の専門性が高かったり、後任者がすぐに見つからなかったり、兼務が多く引き継ぎ先が複数にわたる場合などは、1ヶ月では引き継ぎが完了しないケースも少なくありません。
まずは、自身の業務内容を棚卸しし、引き継ぎにどれくらいの期間が必要かを見積もってみましょう。以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 担当業務の種類と量、複雑さ
- マニュアルや手順書の整備状況
- 後任者の有無、決定までの期間(未定の場合)
- 後任者のスキルや経験レベル
- 引き継ぎ資料の作成に必要な時間
- OJT(On-the-Job Training)による実務指導の必要性
一般的には、最低でも1ヶ月は引き継ぎ期間として見ておくのが無難です。役職者や専門性の高い職種の場合は、2〜3ヶ月、あるいはそれ以上の期間が必要になることもあります。
就業規則の規定期間と、現実的に必要な引き継ぎ期間を照らし合わせ、余裕を持ったスケジュールで退職希望日を設定し、早めに上司に伝えることを検討しましょう。例えば、就業規則が「1ヶ月前」でも、引き継ぎに2ヶ月かかると判断した場合は、退職希望日の2ヶ月以上前に伝えるのが理想的です。
これにより、会社側も後任者の選定や配置転換などを余裕を持って進めることができ、結果的にスムーズな引き継ぎと円満な退職につながります。
遅くとも退職希望日の1ヶ月前には伝える
これまで述べてきた点を総合的に考慮すると、退職を伝えるタイミングは、遅くとも退職希望日の1ヶ月前というのが一つの目安になります。これは、多くの企業の就業規則で定められている期間であり、会社側が後任者の手配や諸手続きを進める上で、最低限必要と考えられる期間だからです。
ただし、これはあくまで「最低ライン」と捉えるべきです。前述の通り、引き継ぎに必要な期間は業務内容や役職によって異なります。自身の状況に合わせて、1ヶ月半前、2ヶ月前、あるいはそれ以前に伝えるなど、柔軟に判断することが重要です。
特に、以下のような場合は、1ヶ月前よりも早めに伝えることを強く推奨します。
- 管理職やリーダーなど、責任のあるポジションに就いている場合
- 専門性の高い業務を担当しており、後任者の確保や育成に時間がかかると予想される場合
- 担当しているプロジェクトが長期にわたる場合
- 有給休暇が多く残っており、退職日までに消化したい場合
早めに伝えることで、会社は余裕を持って対応策を検討でき、あなた自身も引き継ぎや有給休暇の消化などを計画的に進めることができます。ただし、あまりに早すぎるタイミング(例:半年前や1年前など)での報告は、かえって業務へのモチベーション維持が難しくなったり、周囲との関係性に影響が出たりする可能性もあるため、常識的な範囲(一般的には1〜3ヶ月前程度)で判断するのが良いでしょう。
最終的には、法律、就業規則、業務状況、引き継ぎ期間、そして上司や同僚への配慮といった複数の要素を総合的に判断し、最適なタイミングを見極めることが、円満退職への道筋となります。
【例文】上司への退職の伝え方 シチュエーション別
退職を決意し、上司に伝える際には、状況に応じた適切な言葉を選ぶことが円満退職への重要なステップとなります。ここでは、よくあるシチュエーション別に、上司への退職の伝え方の具体的な例文をご紹介します。あくまで例文ですので、ご自身の状況や上司との関係性に合わせて調整してください。
基本的な退職報告の例文
まずは、どのような状況でも使える基本的な退職報告の例文です。退職理由を詳細に話す必要がない場合や、差し障りのない理由で伝える際に参考にしてください。丁寧な言葉遣いを心がけ、感謝の気持ちを伝えることが大切です。
(上司にアポイントを取り、個室などで)
あなた:「〇〇部長、お忙しいところ恐縮ですが、今、少しお時間いただけますでしょうか。」
上司:「はい、大丈夫ですよ。どうしましたか?」
あなた:「突然のご報告となり大変申し訳ございませんが、この度、一身上の都合により、退職させていただきたく、ご相談のお時間をいただきました。」
上司:「そうですか…(驚きや理由を尋ねる反応)」
あなた:「はい。自分なりに考え抜いた結果、退職を決意いたしました。」
あなた:「退職希望日としては、会社の規定に則り、〇月〇日を考えております。」
あなた:「これまで〇〇部長には大変お世話になり、多くのことを学ばせていただきました。心より感謝申し上げます。」
あなた:「最終出社日まで、担当業務の引き継ぎは責任を持ってしっかりと行いますので、ご安心ください。 ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。」
転職先が決まっている場合の伝え方 例文
転職が理由で退職する場合、正直に伝えるかどうかは状況によります。一般的には、具体的な転職先名を伝える必要はありません。 ポジティブな理由として、自身のキャリアアップや新しい挑戦への意欲を伝えることで、上司の理解を得やすくなる場合があります。
(基本的な流れは上記と同様)
あなた:「〇〇部長、お忙しいところ恐縮ですが、今、少しお時間いただけますでしょうか。」
上司:「はい、大丈夫ですよ。どうしましたか?」
あなた:「突然のご報告で申し訳ありません。この度、退職させていただきたく、お時間をいただきました。」
上司:「そうですか…何か理由があるのですか?」
あなた:「はい。実は、以前より興味を持っておりました〇〇(分野や職種など)の分野で、自分のスキルを試したいという思いが強くなり、この度、ご縁があって次のキャリアに進むことを決意いたしました。」
(もし聞かれたら)あなた:「具体的な会社名については、申し訳ありませんが控えさせていただけますでしょうか。」
あなた:「退職希望日は〇月〇日を考えております。」
あなた:「現職で培った経験やスキルは、次のステップでも活かしていきたいと考えております。〇〇部長をはじめ、皆様には大変感謝しております。」
あなた:「残り期間となりますが、業務の引き継ぎは誠意をもって対応させていただきます。 ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。」
家庭の事情で退職する場合の伝え方 例文
家庭の事情はプライベートな内容を含むため、どこまで具体的に話すかは慎重に判断しましょう。詳細を話す義務はありませんが、上司に納得してもらいやすいよう、差し支えない範囲で状況を説明すると、理解を得やすくなります。 やむを得ない事情であることを丁寧に伝えましょう。
(基本的な流れは上記と同様)
あなた:「〇〇部長、お忙しいところ恐縮ですが、今、少しお時間いただけますでしょうか。」
上司:「はい、大丈夫ですよ。どうしましたか?」
あなた:「突然のご報告となり、大変申し訳ございません。実は、家庭の事情により、退職させていただきたく、お時間をいただきました。」
上司:「そうですか…差し支えなければ、どのようなご事情か教えていただけますか?」
あなた:「はい。(例:実家で親の介護が必要となり、地元に戻ることになりました。/配偶者の転勤が決まり、〇〇(地名)へ引っ越すことになりました。)つきましては、現在の仕事を続けることが困難な状況となりました。」
あなた:「誠に勝手ながら、退職希望日は〇月〇日を考えております。」
あなた:「これまで〇〇部長には公私にわたり大変お世話になり、感謝の気持ちでいっぱいです。」
あなた:「退職日まできちんと業務を行い、後任の方への引き継ぎもしっかりと行いますので、ご安心ください。 ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。」
家庭の事情には様々なケースがあります。以下に代表的な例と伝え方のポイントをまとめます。
家庭の事情(例) | 伝え方のポイント |
---|---|
親の介護 | 介護に専念する必要があること、場合によっては転居が伴うことなどを伝える。 |
配偶者の転勤 | 転居が必要となり、現在の勤務地での就業が困難になることを伝える。 |
自身の結婚・出産・育児 | ライフステージの変化に伴い、働き方を見直す必要があること、あるいは一時的に仕事から離れる必要があることを伝える。(育児休業などの制度利用も検討した上で退職を選ぶ場合は、その経緯も簡潔に触れても良い) |
体調不良が理由で退職する場合の伝え方 例文
体調不良が理由の場合、具体的な病名を伝える必要はありません。 「健康上の理由」「体調不良」といった表現で十分です。ただし、業務の継続が困難であること、治療や療養に専念する必要があることを明確に伝えましょう。休職ではなく退職を選ぶ理由も、簡潔に添えると理解を得やすくなります。
(基本的な流れは上記と同様)
あなた:「〇〇部長、お忙しいところ恐縮ですが、今、少しお時間いただけますでしょうか。」
上司:「はい、大丈夫ですよ。どうしましたか?」
あなた:「突然のご報告で大変申し訳ありません。実は、健康上の理由により、退職させていただきたく、お時間をいただきました。」
上司:「そうですか…体調が良くなかったのですか?」
あなた:「はい。以前から少し体調が優れず、医師とも相談した結果、一度業務から離れ、治療に専念した方が良いという判断に至りました。」
あなた:「休職も考えましたが、回復までの期間が見通せないこともあり、一度退職させていただき、しっかりと療養したいと考えております。」
あなた:「退職希望日は〇月〇日を考えております。」
あなた:「体調が万全でない中、ご迷惑をおかけすることもあるかと存じますが、可能な限り業務に支障が出ないよう努めます。引き継ぎに関しても、責任を持って行います。」
あなた:「これまで〇〇部長には温かいご指導をいただき、本当に感謝しております。 何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。」
(もし診断書の提出を求められた場合は、可能な範囲で応じましょう。ただし、提出義務はありません。)
円満退職のための注意点 上司への伝え方で気をつけたいこと
退職の意思を上司に伝える際には、できる限り円満に進めたいものです。伝え方一つで、その後の手続きのスムーズさや、会社に残るメンバーとの関係性が大きく変わることもあります。ここでは、円満退職を実現するために、上司への伝え方で特に気をつけたい注意点を7つ解説します。
最初に伝える相手は直属の上司
退職の意向を固めたら、最初に報告すべき相手は、必ず直属の上司です。これは、組織のルールや指揮命令系統を守る上で、社会人として当然のマナーと言えます。
親しい同僚や先輩、あるいは人事部の担当者などに先に話してしまうと、直属の上司が他の人からあなたの退職を知るという、気まずい状況を生んでしまいます。これは上司の心証を損ねるだけでなく、管理能力を疑われることにも繋がりかねません。
また、情報が正式なルート以外で広まることで、根拠のない噂が立ったり、退職交渉がスムーズに進まなくなるリスクもあります。まずは直属の上司にアポイントを取り、直接、誠意をもって伝えることが、円満退職への第一歩です。
退職理由は正直かつ簡潔に 会社の不満は避ける
退職理由を伝える際には、正直さと表現への配慮のバランスが求められます。嘘をつく必要はありませんが、会社や上司、同僚に対する不平不満や批判を感情的にぶつけることは、円満退職の妨げになるため絶対に避けましょう。
たとえネガティブな理由が本音であったとしても、それをストレートに伝えると、後味の悪い別れになったり、引き継ぎなどに協力してもらえなくなる可能性もあります。「立つ鳥跡を濁さず」の精神で、できる限りポジティブな表現に言い換えるか、「一身上の都合」として具体的な理由を伏せるのが賢明です。
伝える際は、長々と話すのではなく、簡潔に要点を伝えることを意識しましょう。具体的な伝え方の例をいくつかご紹介します。
避けるべき表現(本音の例) | 円満退職のための言い換え例 |
---|---|
給与や待遇に不満がある | 自身のキャリアプランを見直し、新たな分野で専門性を高めたいと考えております。/より成果が評価される環境で挑戦したいと考えております。 |
上司や同僚との人間関係がうまくいかない | チームで協力するよりも、個人の裁量で進められる業務に挑戦したいと考えております。/自身のコミュニケーションスタイルを見つめ直し、新たな環境で再スタートしたいと考えております。 |
残業が多く、労働環境が厳しい | ワークライフバランスを整え、長期的なキャリア形成を目指したいと考えております。/家族との時間を大切にするため、働き方を見直したいと考えております。 |
会社の将来性や事業内容に不安がある | 以前から興味のあった〇〇業界(分野)で、自身のスキルを活かしたいという思いが強くなりました。/自身のキャリア目標達成のため、新たな環境でチャレンジしたいと考えております。 |
感謝の気持ちを伝えつつ、前向きな理由を添えることで、上司にも納得してもらいやすくなり、円満な退職につながります。
感情的にならず冷静に話す
退職を伝えるという行為は、少なからず緊張や不安を伴うものです。しかし、感情的にならず、冷静に落ち着いて話すことが非常に重要です。
特に、退職理由について深く問われたり、強い引き止めにあったりすると、つい感情的になってしまうことがあります。しかし、感情的な言動は、話し合いをこじらせ、円満な解決を遠ざけるだけです。冷静さを失うと、本来伝えるべき感謝の気持ちや、今後の協力姿勢なども伝えきれなくなる可能性があります。
事前に伝えるべき内容を整理し、上司からの質問や反応をある程度想定して、対応をシミュレーションしておくと、当日も落ち着いて臨むことができます。話す前に深呼吸をする、お茶を一口飲むなど、自分なりのリラックス方法を見つけておくのも良いでしょう。最後までプロフェッショナルとしての態度を保つことが、円満退職の鍵です。
相談ではなく報告の形で伝える
上司に退職の意向を伝える際は、「相談」ではなく「報告」というスタンスで臨むことが大切です。「退職しようか悩んでいるのですが…」「辞めさせていただくことも考えていまして…」といった曖昧な表現や相談口調で切り出すと、上司に「まだ引き止める余地がある」「説得すれば考え直すかもしれない」と思わせてしまう可能性があります。
その結果、強い引き止めにあったり、待遇改善などの条件提示を受けて話が長引いたり、決意が揺らいでしまったりするケースも少なくありません。
アポイントを取る際は「ご相談したいことがあるのですが」という表現でも構いませんが、実際の面談の場では、「この度、一身上の都合により退職させていただきたく、ご報告にまいりました」「〇月〇日をもちまして、退職させていただきたく存じます」のように、退職の意思が固まっていることを明確に伝えましょう。
ただし、一方的な通告にならないよう、丁寧な言葉遣いと謙虚な姿勢は忘れないでください。「報告」という形を取りつつも、これまでお世話になったことへの感謝の気持ちを伝え、相手への敬意を示すことが円満なコミュニケーションにつながります。
退職日まで責任を持って業務を行う姿勢を示す
退職の意思を伝え、退職日が決定した後も、最終出社日まで責任感を持って業務に取り組む姿勢を示すことは、円満退職のために不可欠な要素です。「立つ鳥跡を濁さず」という言葉の通り、最後までプロフェッショナルとして誠実に対応することで、会社や同僚との良好な関係を保ったまま、気持ちよく次のステップへ進むことができます。
具体的には、以下の点を強く意識しましょう。
- 丁寧かつ十分な引き継ぎ: 後任者や関係部署が困らないよう、担当業務に関する情報(手順、進捗状況、関係者の連絡先、注意点など)を整理し、分かりやすい資料を作成します。口頭での説明やOJTの時間も十分に確保し、質問にも丁寧に対応しましょう。
- 周囲への配慮と協力: 退職が決まったからといって、仕事への意欲を失ったり、周囲への配慮を欠いたりするような態度は厳禁です。最後までチームの一員として協力的な姿勢を保ち、周囲への感謝の気持ちを忘れずに伝えましょう。
- 有給休暇の計画的な消化: 残っている有給休暇を消化する際は、業務の状況や引き継ぎスケジュールを考慮し、事前に上司と相談の上、計画的に取得するようにしましょう。最終出社日間際にまとめて取得するのではなく、余裕を持ったスケジュール調整が望ましいです。
退職日までのあなたの行動は、周囲の記憶に残りやすいものです。誠実な対応を最後まで貫くことが、あなたの社会人としての評価を守り、将来的なキャリアにおいてもプラスに働くでしょう。
メールや電話だけで済ませるのは避ける
退職という人生における重要な決断を伝える際は、原則として、直属の上司に対面で直接伝えるのが基本的なビジネスマナーです。メールや電話だけで報告を済ませようとすることは、相手に対して誠意が欠けている、軽んじられているという印象を与えかねず、円満な退職の妨げになる可能性があります。
対面で話すことで、言葉だけでなく、表情や声のトーンからも、あなたの真摯な気持ちや感謝の意を伝えることができます。また、その場で質疑応答ができるため、誤解やすれ違いを防ぎ、スムーズな意思疎通を図ることにも繋がります。
もちろん、以下のようなやむを得ない事情がある場合は例外です。
- 勤務形態による制約: リモートワークが主体で、上司と直接会う機会がほとんどない場合。
- 物理的な距離: 上司が遠方の支社や海外に勤務している場合。
- 健康上の理由: 体調不良や怪我などにより、出社して対面で話すことが困難な場合。
- 精神的な理由: ハラスメントなどが原因で、上司と直接顔を合わせることに強い抵抗がある場合。(この場合は人事部や信頼できる第三者に相談することも検討しましょう)
このような場合は、まずメールや電話でアポイントを取り、オンライン面談を設定するなど、状況に応じた最も丁寧な方法を選びましょう。その際には、対面で直接お伝えできないことへのお詫びと、その理由をきちんと説明する配慮が大切です。
SNSなどでの発信内容に注意する
退職交渉中や退職が決定した後の期間は特に、X(旧Twitter)、Facebook、InstagramといったSNSや、個人のブログなどでの発信内容には細心の注意を払いましょう。
たとえ冗談のつもりであっても、会社や上司、同僚に対する不満や批判、内部情報(未公開のプロジェクト、人事情報など)に関する書き込みは絶対に避けるべきです。鍵付きのアカウントであっても、スクリーンショットなどで情報が拡散するリスクはゼロではありません。軽率な発信が原因でトラブルに発展し、円満退職が台無しになるケースもあります。
また、転職先が決まっている場合、正式な入社日や内定承諾前に、転職先企業名や具体的な業務内容などを公にすることも控えましょう。これは、現職の会社に対してだけでなく、転職先の企業に対しても情報管理の甘さを疑われ、マイナスの印象を与えかねません。
退職というデリケートな時期においては、公の場での発言は、いつも以上に慎重に行うことを心がけてください。感謝の気持ちや前向きな抱負を述べるに留めるなど、誰が見ても不快にならない、ポジティブな内容に限定するのが賢明です。
上司からの強い引き止めにあった場合の対処法
退職の意思を伝えた際、上司から強い引き止めにあうケースは少なくありません。特に、会社にとって必要な人材であると評価されている場合や、人手不足の部署に所属している場合などは、引き止めが強くなる傾向があります。しかし、ここで曖昧な態度をとってしまうと、退職交渉が長引いたり、円満退職が難しくなったりする可能性があります。冷静かつ誠実に対応するための具体的な方法を知っておきましょう。
退職の意思が固いことを再度伝える
引き止めにあった際に最も重要なのは、退職の意思が揺るぎないことを、改めて明確に伝えることです。上司は、部下の将来を心配したり、チームや業務への影響を考えたりして、引き止めを試みることがあります。一度断られても、説得すれば考え直してくれるかもしれない、という期待を持っている場合もあります。
そのため、引き止めに対しては、感謝の気持ちを示しつつも、毅然とした態度で「退職の決意は変わりません」とはっきり伝える必要があります。「少し考えさせてください」「相談させてください」といった、期待を持たせるような言葉は避けましょう。「相談」ではなく、あくまで「報告」であるというスタンスを崩さないことが大切です。
具体的には、以下のような表現で伝えるのが効果的です。
- 「大変ありがたいお話ですが、退職の意思は固まっております。」
- 「熟慮を重ねた上での決断ですので、ご理解いただけますと幸いです。」
- 「お気持ちは大変嬉しいのですが、私の決意は変わりません。」
感情的にならず、落ち着いた口調で、しかし断固とした意志を示すことが、スムーズな退職交渉につながります。
感謝の意を示しつつ丁寧にお断りする
強い引き止めは、ある意味ではこれまでのあなたの仕事ぶりや貢献に対する会社や上司からの評価の表れとも言えます。そのため、引き止めてくれたこと自体に対しては、まず感謝の気持ちを伝えることが大切です。これにより、相手の気持ちを逆なですることなく、円満な関係を保ったまま退職交渉を進めやすくなります。
感謝の意を示した上で、退職の意思が変わらないことを丁寧に伝えましょう。これまでの指導や経験に対する感謝の言葉を添えるのも良いでしょう。
伝え方の例としては、以下のようなものが考えられます。
- 「これまでのご指導、本当に感謝しております。また、このように引き止めていただき、大変ありがたく思っております。しかしながら、退職の決意は変わりません。」
- 「〇〇部長には大変お世話になり、感謝の気持ちでいっぱいです。今回の退職は、自分自身の将来を考え抜いた上での決断となります。ご理解いただけますでしょうか。」
- 「温かいお言葉、ありがとうございます。この会社で得た経験は私の財産です。その上で、新たな道に進むことを決めました。」
感謝を伝えつつも、退職の意思は明確にすることが重要です。感謝の言葉が、引き止めを受け入れるサインだと誤解されないように、言葉を選びましょう。あくまで丁寧な言葉遣いを心がけ、誠実な姿勢で対応することが、円満退職への鍵となります。
待遇改善などの条件提示への対応
引き止めの手段として、上司から給与アップや昇進、希望部署への異動、業務内容の変更といった待遇改善の条件が提示されることがあります。これは、会社側があなたを引き留めるための具体的なインセンティブを示している状況です。
このような条件提示に対しては、提示された条件だけで安易に退職を取りやめないことが重要です。なぜなら、一度退職を申し出たという事実は社内に残り、将来的に気まずい思いをしたり、評価に影響したりする可能性がゼロではないからです。また、提示された条件が一時的なもので、根本的な退職理由(例えば、企業文化や人間関係、仕事内容への不満など)が解決されない限り、いずれ再び退職を考えることになる可能性が高いでしょう。
具体的な対応としては、まず条件提示に対して感謝の意を示します。「私のために、そのような条件をご検討いただき、誠にありがとうございます」といった言葉を伝えると良いでしょう。
その上で、退職の意思が変わらないことを伝えます。もし退職理由が待遇面だけではない場合は、その旨を正直に、しかし簡潔に伝えるのが効果的です。
- 「大変魅力的なお話ですが、今回の退職は待遇面だけが理由ではございません。自身のキャリアプランに基づき、熟慮した上での決断ですので、辞意は変わりません。」
- 「給与や役職についてご配慮いただき、心より感謝いたします。しかしながら、別の環境で挑戦したいという気持ちが強く、退職させていただきたく存じます。」
もし、待遇面が退職の主な理由であり、提示された条件によってその不満が解消されるのであれば、退職を考え直す余地もあるかもしれません。しかしその場合でも、口約束ではなく、条件を書面で提示してもらうなど、慎重な判断が求められます。安易に受け入れて後悔しないよう、十分に検討しましょう。
一般的に提示されやすい条件と、対応する上での考え方を以下の表にまとめます。
提示される条件例 | 対応のポイント・考え方 |
---|---|
給与アップ | 退職理由が本当に給与だけなのかを冷静に再考しましょう。他の理由(仕事内容、人間関係、キャリアプランなど)がある場合は、給与が上がっても根本的な解決にはなりません。受け入れる場合も、その昇給が将来にわたって適正な評価に基づくものか慎重に判断する必要があります。 |
昇進・昇格 | 役職が上がることで、責任や業務内容がどのように変化するかを具体的に確認しましょう。自身のキャリアプランと合致するか、プレッシャーに耐えられるかなどを検討します。昇進しても、退職を決意した根本的な理由が解決しないのであれば、断るのが賢明です。 |
希望部署への異動 | 異動先の部署の業務内容や人間関係、労働環境などを可能な範囲で確認しましょう。一時的な問題解決策ではなく、長期的に見て自身の希望に沿うものかを見極める必要があります。異動しても会社全体の文化が変わるわけではない点も考慮しましょう。 |
業務内容の変更・負担軽減 | なぜ今になってその提案がされるのかを考えてみましょう。退職を申し出たからこその一時的な対応である可能性もあります。根本的な問題(人員不足、業務プロセス、企業文化など)が解決されない限り、再び同様の問題が発生する可能性があります。 |
魅力的なプロジェクトへのアサイン | 一時的にやりがいを感じられるかもしれませんが、プロジェクトが終了した後や、プロジェクト自体が期待通りに進まなかった場合のことを考えましょう。退職の意思が固いのであれば、期待を持たせずに丁寧にお断りするのが、会社にとってもあなたにとっても誠実な対応と言えます。 |
どのような条件を提示された場合でも、最終的な決断は自分自身のキャリアプランや価値観に基づいて行うことが最も重要です。流されることなく、冷静に判断し、後悔のない選択をしましょう。
退職願・退職届の準備と提出方法
上司に退職の意思を伝え、承認を得た後は、正式な手続きとして退職願または退職届を提出します。ここでは、それぞれの書類の違いや適切な提出タイミング、マナーについて詳しく解説します。
退職願と退職届の違いとは
退職願と退職届は、どちらも退職の際に提出する書類ですが、その意味合いと提出する状況が異なります。どちらを提出すべきかは、会社の慣習や就業規則によって異なる場合があるため、事前に確認しておくと安心です。一般的には、まず退職願を提出し、会社との合意を経て退職日が確定した後に、退職届を提出する流れが多いですが、最初から退職届の提出を求められるケースもあります。
それぞれの書類の主な違いは以下の通りです。
書類名 | 意味合い | 提出する状況 | 撤回の可否 |
---|---|---|---|
退職願 | 会社に対して退職を「お願い」する書類 | 退職の意思を最初に表明する際。会社との合意形成が必要な場合。 | 会社が承諾する前であれば、原則として撤回可能 |
退職届 | 会社に対して退職を「届け出る」書類 | 退職することが確定した後。会社から提出を求められた場合。 | 提出後の撤回は原則として不可(一方的な意思表示のため) |
自己都合退職の場合は、まず「退職願」を提出し、上司や人事部との話し合いを経て退職日などを確定させ、最終的に「退職届」の提出を求められる、という流れが一般的です。ただし、会社の規定によっては「退職届」のみで良いとされる場合もありますので、上司に確認するか、就業規則を参照しましょう。
上司への報告後に提出するタイミング
退職願や退職届は、必ず直属の上司に退職の意思を口頭で伝え、内諾を得た後、または退職日が正式に決定した後に提出するのが基本的なマナーです。事前に何の相談もなく、いきなり書類を提出するのは、上司に対して失礼にあたるだけでなく、一方的な印象を与え、円満な退職を妨げる可能性があります。
具体的な提出タイミングは、上司との面談時に確認するのが最も確実です。「退職願(または退職届)は、いつ、どなたに提出すればよろしいでしょうか」と尋ねましょう。通常は、退職交渉がまとまり、最終的な退職日が確定した段階で、上司の指示に従って提出します。
就業規則に「退職届は退職日の〇日前までに提出すること」といった規定がある場合は、そのルールに従う必要があります。遅くとも退職日の1ヶ月前、引き継ぎ期間なども考慮すると、1ヶ月半〜2ヶ月前には退職の意思を伝え、書類提出のタイミングについても相談しておくのが理想的です。
手渡しが基本のマナー
退職願・退職届は、原則として直属の上司に直接手渡しで提出します。これは、お世話になった上司への敬意を示すとともに、退職という重要な手続きを確実に行うためのマナーです。
提出する際は、以下の点に注意しましょう。
- 書類の準備: 白無地の便箋に黒のボールペンまたは万年筆で手書きするか、パソコンで作成して印刷します。誤字脱字がないか、提出前に必ず確認しましょう。
- 封筒: 白無地の郵便番号欄がない封筒(長形3号または長形4号が一般的)を用意します。
- 封筒の書き方(表面): 中央に「退職願」または「退職届」と記載し、左下に自分の所属部署と氏名を書きます。宛名は通常不要ですが、会社によっては宛名(例:「代表取締役社長 〇〇様」)を書くよう指示される場合もありますので、事前に確認しましょう。
- 封筒の書き方(裏面): 左下に自分の所属部署と氏名を記載します。(表面に書いた場合は不要なこともあります)
- 封入: 書類を三つ折りにして封筒に入れます。封はしなくても構いませんが、する場合は「〆」マークを記載します。
- 手渡し: 上司に「お忙しいところ恐れ入ります。退職願(退職届)をお持ちいたしましたので、ご確認をお願いいたします」といった言葉を添えて、両手で丁寧に渡します。
やむを得ない事情(例:上司が長期不在、自身が遠隔地にいるなど)で手渡しが難しい場合は、必ず事前に上司に相談し、郵送での提出許可を得ましょう。郵送する場合は、送付状を添え、内容証明郵便や簡易書留など、記録が残る方法で送るのが確実です。
退職願・退職届の提出は、退職手続きにおける重要なステップです。マナーを守り、丁寧に進めることで、最後まで良好な関係を保ち、円満な退職へと繋げることができます。
まとめ
円満な退職を実現するためには、上司への適切な伝え方が極めて重要です。退職を決意したら、まず就業規則を確認し、退職希望日や伝えるべき理由を整理しましょう。報告は直属の上司へ、相談ではなく明確な意思表示として行うのが基本です。アポイントを取り、感謝の気持ちと共に、引き継ぎ期間を考慮したタイミングで伝えましょう。会社の不満は避け、冷静かつ誠実な態度を心がけることが、最後まで良好な関係を保ち、円満退職へと繋がる結論となります。
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