傷病手当金をもらうとボーナスはどうなる?

退職のミカタ

傷病手当金を受給中にボーナスが支給されるとどうなるのか、不安に思う方もいるでしょう。この記事を読めば、傷病手当金とボーナスの関係、支給の有無、手当金への影響、計算方法、税金や社会保険料まで詳しく分かります。結論として、原則ボーナスで傷病手当金は減額されず、計算基礎にも含まれませんが、就業規則による例外や注意すべき点も解説しますので、安心して制度を理解できます。

目次

傷病手当金とは 制度の基本を理解しよう

傷病手当金は、会社員や公務員などが加入する健康保険の制度の一つです。病気やケガのために仕事を休まなければならなくなった際に、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた所得補償制度です。給与の支払いがない、または減額された場合に、一定の条件を満たせば健康保険から給付金が支給されます。

この制度を正しく理解しておくことは、万が一の際に安心して療養に専念するために非常に重要です。ここでは、傷病手当金の基本的な仕組み、特に支給条件や対象者、そして支給額の計算方法について詳しく解説します。

傷病手当金の支給条件と対象者

傷病手当金を受給するためには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。これらの条件は、業務外の事由による傷病で働けない状態であることを前提としています。

条件詳細説明
1. 業務外の事由による病気やケガのための療養であること

健康保険の対象となる療養であれば、自宅療養でも問題ありません。ただし、美容整形など、病気とはみなされないものは対象外です。また、仕事中や通勤途中のケガや病気(業務災害・通勤災害)は労災保険の給付対象となるため、傷病手当金の対象にはなりません。

2. 仕事に就くことができないこと(労務不能)

療養のために、今まで従事していた仕事に就くことができない状態であることが必要です。これは自己判断ではなく、医師の診断書などに基づいて判断されます。必ずしも入院している必要はなく、自宅療養でも医師が労務不能と認めれば対象となります。

3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと(待期期間の完成)

仕事を休んだ日が連続して3日間(待期期間)あった後、4日目以降も休んだ日に対して支給されます。この最初の3日間(待期期間)には、有給休暇、土日祝日などの公休日も含まれます。給与の支払いがあったかどうかは問いません。待期期間は一度完成すれば、その後同じ傷病で再度休業した場合でも、改めて待期期間を設ける必要はありません。

4. 休業した期間について給与の支払いがないこと

原則として、休業した期間に対して会社から給与が支払われていないことが条件です。ただし、給与が支払われた場合でも、その額が傷病手当金の額よりも少ない場合は、差額が支給されます。有給休暇を取得した日については、給与が支払われているため傷病手当金の対象とはなりません。

対象者については、原則として勤務先の健康保険に加入している被保険者本人です。パートやアルバイトの方でも、健康保険の加入条件を満たしていれば対象となります。国民健康保険の加入者や、健康保険の被扶養者は原則として対象外です(一部の国民健康保険組合では独自の傷病手当金制度を設けている場合があります)。

また、退職後も一定の条件を満たせば継続して受給できる場合があります(資格喪失後の継続給付)。具体的には、退職日(資格喪失日の前日)までに被保険者期間が継続して1年以上あり、かつ、資格喪失時に傷病手当金を受給しているか、受給できる状態(待期期間完成後、労務不能かつ給与の支払いがない)である必要があります。

傷病手当金の支給額はどう決まるのか 計算方法を解説

傷病手当金の1日あたりの支給額は、休業1日につき、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2と定められています。少し複雑に聞こえるかもしれませんが、計算式で表すと以下のようになります。

【傷病手当金の1日あたりの支給額の計算式】

支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × (2/3)

ここでいう「支給開始日」とは、最初に傷病手当金が支給された日を指します。また、「標準報酬月額」とは、健康保険料や厚生年金保険料の計算の基礎となるもので、毎月の給与などの報酬の月額を一定の幅で区分したものです。通常、毎年4月~6月の報酬月額を基に決定され、その年の9月から翌年8月まで適用されます。

もし、支給開始日以前の健康保険の被保険者期間が12ヶ月に満たない場合は、以下のいずれか低い方の額を使用して計算されます。

  • 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
  • 前年度9月30日における、加入している健康保険の全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額(健康保険組合の場合は組合の平均、協会けんぽの場合は協会けんぽの平均)

傷病手当金の支給期間は、同一の病気やケガに関して、支給を開始した日から通算して1年6ヶ月です。以前は暦の上で1年6ヶ月でしたが、令和4年1月1日より、途中で出勤した日など傷病手当金が支給されなかった期間がある場合、その期間分を延長して支給を受けられるよう「通算化」されました。これにより、より柔軟に制度を利用できるようになっています。

なお、休業期間中に会社から給与が一部支払われた場合、その額が傷病手当金の額より少なければ差額が支給されます。また、障害厚生年金や障害手当金、老齢(退職)年金、出産手当金、労災保険の休業(補償)等給付など、他の公的制度から給付を受けられる場合は、傷病手当金の支給額が調整されたり、支給停止となったりすることがありますので注意が必要です。

傷病手当金受給中のボーナス支給の有無について

病気やケガで長期間仕事を休むことになった際、生活を支える傷病手当金は非常に重要な制度です。しかし、休職中にボーナス(賞与)の支給時期が重なった場合、「ボーナスはもらえるのだろうか?」「傷病手当金の額に影響はあるのだろうか?」といった疑問が生じることでしょう。ここでは、傷病手当金受給中のボーナス支給の有無や、支給された場合の傷病手当金への影響について詳しく解説します。

会社の就業規則や賃金規程でボーナスの扱いを確認

傷病手当金を受給している期間中にボーナスが支給されるかどうかは、勤務先の会社の就業規則や賃金規程によって決まります。ボーナスは、毎月の給与とは異なり、法律で支給が義務付けられているものではありません。そのため、支給条件や算定方法、休職中の取り扱いなどは、各企業が独自に定めています。

まずは、ご自身の会社の就業規則や賃金規程(賞与規程など)を確認しましょう。確認すべき主なポイントは以下の通りです。

  • 支給対象者: ボーナス支給日に在籍していること、一定期間以上の勤務実績があることなどが条件とされている場合があります。休職中の社員が支給対象に含まれるかどうかが明記されているか確認が必要です。
  • 査定期間と算定方法: ボーナスは、通常、特定の査定期間中の勤務実績や業績貢献度に基づいて算定されます。休職していた期間が査定期間に含まれる場合、その期間の評価がどのようになされるか(例えば、欠勤扱いとして減額されるのか、あるいは全く支給されないのか)が規定されていることがあります。
  • 休職者・欠勤者への取り扱い: 「私傷病による休職期間中は賞与を支給しない」「欠勤日数に応じて減額する」といった具体的な規定があるかを確認します。

これらの規程は、通常、入社時に配布されたり、社内のイントラネットで閲覧できたりします。見当たらない場合や解釈に迷う場合は、人事部や総務部などの担当部署に問い合わせるのが確実です。口頭での確認だけでなく、可能であれば書面で回答をもらうか、該当する規程の箇所を示してもらうと良いでしょう。

ボーナスが支給された場合 傷病手当金への影響は?

仮に、休職中に会社からボーナスが支給された場合、それが傷病手当金の支給額に影響を与えるのかどうかは非常に気になるところです。結論から言うと、原則として影響はありませんが、例外的なケースも存在します。

原則として傷病手当金はボーナスで減額されない

原則として、傷病手当金の支給額がボーナス(賞与)の支給によって減額されることはありません。これは、傷病手当金が「労務不能となった期間の生活保障」を目的としているのに対し、ボーナスは一般的に「過去の労働に対する対価」や「企業の業績に応じた利益の分配」、「将来への期待」といった性格を持つためです。健康保険法において、傷病手当金の支給調整の対象となる「報酬」とは、通常、労働の対償として経常的に支払われる給与などを指します。年に数回支給される一般的なボーナスは、この「報酬」とは性質が異なると解釈されるため、傷病手当金の調整対象にはなりません。

したがって、多くの場合、傷病手当金を受給しながらボーナスを満額(あるいは就業規則に基づいた額)受け取ったとしても、傷病手当金の支給額が減らされることはありません。

例外的にボーナスが報酬とみなされ調整されるケース

ごく稀なケースですが、ボーナス(賞与)という名目であっても、その実質が給与の一部とみなされる場合には、傷病手当金の支給額が調整される可能性があります。これは、そのボーナスが健康保険法上の「報酬」に該当すると判断される場合です。

例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 名称は「賞与」だが、実質的には毎月の給与に含めて支払うべきものを分割して支給していると判断される場合。
  • 年俸制で、年俸の一部が「賞与」として定期的に支払われる契約になっており、その「賞与」部分が休職や欠勤に関わらず一定額支払われるような場合で、かつ、その支給実態が給与と変わらないと保険者が判断した場合。

このようなケースでは、支給されたボーナス額(日額換算)が、傷病手当金の日額から差し引かれて支給されることがあります。ただし、これはあくまで例外的な取り扱いです。この判断は、会社ではなく、加入している健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)が行います

もし、ご自身のボーナスがこのような例外ケースに該当するのではないかと不安な場合は、事前に勤務先の人事担当者や、加入している健康保険組合・協会けんぽに確認することをおすすめします。その際には、ボーナスの支給根拠となる賃金規程や労働契約書などを提示して相談すると、より具体的なアドバイスが得られるでしょう。

傷病手当金の計算基礎にボーナスは含まれるのか

傷病手当金の支給額を考える上で、「ボーナス(賞与)が計算の基礎に含まれるのかどうか」は多くの方が疑問に思う点です。結論から言うと、原則としてボーナスは傷病手当金の計算基礎には含まれません。ここでは、その理由と関連する制度について詳しく解説します。

傷病手当金と標準報酬月額の関係性

傷病手当金の1日あたりの支給額は、「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3」という計算式で算出されます。この計算式の根幹となるのが「標準報酬月額」です。

標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険の被保険者が事業主から受ける毎月の給与などの報酬の月額を、一定の範囲ごとに区分した等級に当てはめたものです。この標準報酬月額を基に、毎月の社会保険料や、傷病手当金、出産手当金などの保険給付の額が決定されます。つまり、傷病手当金の支給額は、過去12ヶ月間の標準報酬月額の平均によって大きく左右されるということです。

標準報酬月額は、基本給のほか、役職手当、通勤手当、残業手当など、労働の対償として経常的に支払われるものが対象となります。

ボーナス(賞与)は標準報酬月額の算定に含まれない

それでは、本題であるボーナス(賞与)が標準報酬月額の算定に含まれるかについてです。健康保険法において、賞与は「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるもの」と定義されています。そして、この賞与は、毎月の給与とは別に「標準賞与額」として扱われ、標準報酬月額の算定基礎には含まれません。

標準賞与額は、その月に支払われた賞与の総額から1,000円未満を切り捨てた額で、健康保険では年度の累計額573万円(厚生年金保険では1ヶ月あたり150万円)が上限となります。この標準賞与額に対しては健康保険料や厚生年金保険料が課されますが、これはあくまで社会保険料の計算のためであり、傷病手当金の支給額を計算する際の「標準報酬月額」とは別のものとして扱われます。

以下の表で、月々の給与とボーナスの扱いについて整理します。

項目月々の給与など(基本給、諸手当)ボーナス(賞与)
標準報酬月額への算入含まれる含まれない
標準賞与額としての扱い該当しない該当する(社会保険料の計算対象)
傷病手当金の計算基礎への影響影響あり(この平均額が基礎となる)影響なし

このように、傷病手当金の支給額は、あくまでも支給開始日以前の継続した12ヶ月間の「各月の標準報酬月額」を平均して計算されるため、ボーナスの支給額が多かったとしても、それが直接的に傷病手当金の1日あたりの支給額を増やすことにはつながらないのです。この点をしっかりと理解しておくことが重要です。

ただし、前述の通りボーナスからも社会保険料は控除されます。この点については、次章以降で詳しく触れていきます。

傷病手当金受給中にボーナスを受け取った場合の社会保険料と税金

傷病手当金を受給している期間中に会社からボーナス(賞与)が支給された場合、そのボーナスから社会保険料や税金がどのように引かれるのか、また傷病手当金自体の税金の扱いについて気になる方も多いでしょう。ここでは、それぞれの取り扱いについて詳しく解説します。

ボーナスから引かれる健康保険料と厚生年金保険料

傷病手当金を受給して会社を休んでいる期間中であっても、会社に在籍している限り、支給されたボーナスからは通常通り健康保険料と厚生年金保険料が控除されます。これは、傷病手当金の受給資格とは別に、被保険者としての資格が継続しているためです。

ボーナスから控除される社会保険料は、毎月の給与から引かれるものと同様に、標準賞与額に基づいて計算されます。標準賞与額とは、税引き前のボーナス額から1,000円未満を切り捨てた額です。この標準賞与額に、ご加入の健康保険組合や日本年金機構が定める保険料率を乗じて算出されます。40歳以上65歳未満の方は、介護保険料も併せて徴収されます。

具体的にボーナスから引かれる社会保険料は以下の通りです。

保険料の種類概要備考
健康保険料病気やケガ、出産、死亡に備えるための保険料です。保険料率は加入している健康保険組合(協会けんぽ、組合健保など)によって異なります。
厚生年金保険料老齢、障害、死亡に備えるための年金制度の保険料です。保険料率は全国一律ですが、定期的に見直されます。
介護保険料介護が必要になった場合に備えるための保険料です。40歳以上65歳未満の被保険者が対象です。

休職中であっても、これらの社会保険料はボーナスから天引きされるため、手取り額に影響があることを理解しておきましょう。

ボーナスにかかる所得税の扱い

ボーナス(賞与)は、給与所得の一部として所得税の課税対象となります。したがって、傷病手当金を受給している期間中に支給されたボーナスからも、所得税が源泉徴収されます

ボーナスにかかる所得税額は、その月の社会保険料等控除後の賞与の金額に、国税庁が定める「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて税率を乗じて計算されます。この税率は、前月の給与額や扶養親族の数などによって変動します。

会社は、支給するボーナスからあらかじめ所得税を天引きし、国に納付する義務があります。そのため、ボーナスの支給明細書には、源泉徴収された所得税額が記載されているはずです。傷病手当金を受給していること自体は、このボーナスからの所得税徴収には直接影響しません。

傷病手当金は非課税 所得税や住民税の扱いに注意

傷病手当金とボーナスの税金の扱いで最も重要なポイントは、傷病手当金自体は非課税所得であるという点です。健康保険法等の規定に基づき支給される保険給付であり、所得税法上、課税の対象とはなりません。

このため、以下の点が重要になります。

  • 所得税: 傷病手当金には所得税がかかりません。したがって、年末調整や確定申告の際に、傷病手当金を収入として申告する必要はありません。
  • 住民税: 傷病手当金には住民税もかかりません。住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、傷病手当金を受給したことで年間の課税所得が減少した場合、翌年度の住民税額が軽減される可能性があります。

ボーナスは課税対象、傷病手当金は非課税対象という違いをしっかり理解しておくことが大切です。以下に簡単にまとめます。

項目ボーナス(賞与)傷病手当金
所得税課税対象(源泉徴収される)非課税
住民税課税対象(前年の所得として計算)非課税
社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)控除される(傷病手当金からは控除されないが、被保険者資格があれば毎月の給与やボーナスから控除)

年末調整や確定申告の際には、会社から受け取った給与やボーナス(源泉徴収票に記載された金額)のみを申告し、傷病手当金の額を含めないように注意しましょう。もし誤って申告してしまった場合は、税務署に相談し、修正申告などの手続きを行う必要があります。

傷病手当金とボーナスに関するQ&A

傷病手当金とボーナスに関しては、多くの方が疑問を抱くポイントです。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。ご自身の状況と照らし合わせながら、理解を深めていきましょう。

ボーナス支給月に傷病手当金を申請する際の注意点

ボーナスが支給される月に傷病手当金を申請する場合、いくつか注意しておきたい点があります。特に、申請書類の正確な記入と、会社への事前確認が重要となります。

まず、ボーナスが支給されたとしても、その金額が傷病手当金の支給額から直接減額されることは原則としてありません。傷病手当金は、病気やケガで働けない間の生活を保障するためのものであり、ボーナスは過去の労働に対する対価や業績分配としての性格が強いため、通常は別個に扱われます。

しかし、傷病手当金の申請書には、「報酬を受けましたか」といった趣旨の質問項目があり、ボーナスが支給された場合はその事実を正確に記載する必要があります。 これは、健康保険組合が被保険者の収入状況を正確に把握し、適正な支給決定を行うために必要な情報です。もし虚偽の申告をしてしまうと、後々不正受給とみなされ、返還を求められる可能性もあるため、正直に記入しましょう。

また、ボーナス支給に関する会社の規定によっては、休職期間中のボーナスの取り扱いが異なる場合があります。例えば、「査定期間中の出勤日数に応じて減額する」あるいは「休職期間中は不支給とする」といった規定が就業規則に設けられていることもあります。 そのため、傷病手当金の申請とは別に、ご自身のボーナスが実際にいくら支給されるのか、あるいは支給されないのかを、事前に勤務先の人事・労務担当部署に確認しておくことが賢明です。

ボーナス支給月に傷病手当金を申請する際の主な注意点は以下の通りです。

  • 傷病手当金申請書には、ボーナス支給の事実を正直かつ正確に記載する。
  • 勤務先の就業規則や賃金規程を確認し、休職中のボーナス支給に関する取り扱いを把握する。
  • 不明な点があれば、勤務先の人事・労務担当部署や加入している健康保険組合に事前に問い合わせる。
  • ボーナスが支給された場合でも、それが傷病手当金の支給対象となる「報酬」とは通常みなされないことを理解しておく(例外ケースについては後述の章で解説しています)。

会社によってボーナスの規定は異なる?

はい、会社によってボーナス(賞与)の支給に関する規定は大きく異なります。 ボーナスは、労働基準法などで支給が法的に義務付けられているものではなく、各企業が経営状況や方針に基づいて任意に設けている制度だからです。

一般的に、ボーナスの支給条件、算定基準(査定方法)、支給時期、支給対象者、そして病気やケガなどで休職している従業員への取り扱いなどは、会社の「就業規則」や「賃金規程」、あるいは労働組合がある場合は「労働協約」などに具体的に定められています。

傷病手当金を受給している期間、つまり療養のために休職している期間のボーナスについては、特に会社ごとの方針が反映されやすいポイントです。考えられる主なパターンとしては、以下のようなものがあります。

  • 通常通り満額支給されるケース
  • 休職期間や査定期間中の出勤日数に応じて減額して支給されるケース(例:査定期間の半分を休職した場合、半額支給など)
  • 一定期間以上の休職の場合は不支給となるケース
  • 傷病による休職の場合、特別の配慮や規定があるケース

したがって、ご自身の会社のボーナス規定がどのようになっているかを正確に把握することが非常に重要です。まずはご自身の会社の就業規則や賃金規程を丹念に確認しましょう。 もし書類を見ても不明な点や解釈に迷う部分があれば、勤務先の人事・労務担当部署や、労働組合の役員(組合員の場合)に遠慮なく問い合わせてみてください。

ボーナス規定を確認する際の主なポイントは以下の通りです。

確認すべき事項確認先・関連書類の例
ボーナスの支給条件(支給対象者、支給日在籍要件など)就業規則、賃金規程
ボーナスの算定期間と算定方法就業規則、賃金規程、賞与支給細則
休職期間中のボーナスの取り扱い(減額規定、不支給規定など)就業規則、賃金規程、労働協約
過去の同様のケースでの取り扱い実績(可能であれば)人事・労務担当部署へのヒアリング

退職後に傷病手当金を受給する場合のボーナス

退職後に傷病手当金を受給するケース(健康保険の「資格喪失後の継続給付」制度を利用する場合)において、退職前に在籍していた期間に対応するボーナスがどうなるかは、主に会社のボーナス支給規定、特に「支給日在籍要件」の有無と、ご自身の退職日、そしてボーナスの支給日のタイミングによって左右されます。

まず、退職後も傷病手当金を受給できるのは、以下の条件を全て満たす場合です。

  • 退職日(資格喪失日の前日)までに、継続して1年以上の被保険者期間(健康保険に加入していた期間)があること。
  • 資格喪失時に現に傷病手当金を受給しているか、または受給できる状態(労務不能で、待期期間を既に満たしているなど)であること。
  • 退職日に出勤していないこと(療養のため休んでいること)。

この条件を満たせば、退職後も引き続き傷病手当金を受給できます。

次に、ボーナスの支給についてですが、多くの会社では、「ボーナス支給日に会社に在籍していること」を支給の絶対条件(いわゆる「支給日在籍要件」)として就業規則や賃金規程に定めています。

この「支給日在籍要件」がある場合、以下のように取り扱いが分かれるのが一般的です。

  • ボーナス支給日よりも前に退職した場合:
    たとえボーナスの算定期間中に勤務実績があったとしても、支給日当日に在籍していないため、原則としてボーナスは支給されません。ただし、会社によっては、就業規則や労働協約、あるいは個別の合意により、退職者に対しても一定の基準でボーナス(またはそれに準ずる一時金)を支給する規定を設けている場合もあります(例:退職日までの在籍期間に応じて按分計算して支給するなど)。
  • ボーナス支給日以降に退職した場合(ボーナス支給日に在籍していた場合):
    支給日在籍要件を満たしているため、原則としてボーナスは支給対象となります。その後に退職したとしても、一度発生した賃金請求権が遡って消滅することはありません。

したがって、退職を検討しており、かつボーナス支給が近い場合は、ご自身の会社の就業規則や賃金規程で「支給日在籍要件」の有無、および退職者へのボーナスに関する取り扱い(按分支給の規定など)を必ず確認することが極めて重要です。 退職日を1日ずらすだけでボーナスの受給可否が変わる可能性もあるため、慎重な判断が求められます。不明な点があれば、退職手続きを進める前に、人事・労務担当部署に確認することをお勧めします。

傷病手当金とボーナスで損をしないための確認ポイント

傷病手当金を受給している期間のボーナス(賞与)の取り扱いは、法律で一律に定められているわけではなく、会社の規定や個別の状況によって大きく異なるため、非常に複雑です。思わぬ不利益を被らないためには、事前の情報収集と確認が不可欠です。この章では、傷病手当金とボーナスに関して損をしないために、具体的にどのような点を確認すべきか、3つの重要なポイントに分けて解説します。

事前に勤務先の担当部署へ確認する重要性

まず最も基本的かつ重要なのは、勤務先の人事部や総務部、労務担当者など、関連する部署に直接確認することです。直属の上司では詳細な規定まで把握していない可能性があるため、専門の部署に問い合わせるのが確実です。休職に入る前や、ボーナスの支給時期が近づいてきたタイミングで、以下の点について具体的に質問しましょう。

  • 休職中のボーナス支給の有無とその条件
  • ボーナスが支給される場合の算定期間と、ご自身の休職期間がどのように影響するか
  • ボーナス額の算定方法(満額支給か、欠勤控除や休職期間に応じた減額があるか、その具体的な計算根拠)
  • 傷病手当金を受給していることが、ボーナスの支給判断や金額に影響するかどうか(原則として影響しませんが、会社独自の規定がないか確認)
  • ボーナスが支給された場合の社会保険料や所得税の控除について

質問する際は、感情的にならず、確認したい事項をメモにまとめて冷静に尋ねることが大切です。また、回答内容については、後々のトラブルを避けるためにも、メールで返答をもらうか、書面で記録を残しておくことをおすすめします。

就業規則や労働協約をしっかり確認しよう

勤務先の担当部署への確認と並行して、ご自身の会社の就業規則や賃金規程(賞与規程)、労働協約を必ず確認しましょう。これらの書類は、会社と従業員の間の労働条件を定めたものであり、ボーナス支給に関する法的な根拠となります。

特に以下の項目に注目して確認してください。

  • ボーナス(賞与)の支給対象者に関する規定
  • ボーナスの支給条件(例:算定期間中の出勤率、支給日在籍要件など)
  • ボーナスの算定方法や査定基準
  • 休職者や長期欠勤者に対するボーナスの取り扱いに関する具体的な記載(減額規定、不支給規定など)

就業規則は、社内イントラネットで閲覧できるか、人事部や総務部に申し出て入手できるのが一般的です。必ず最新版のものを確認し、内容に不明な点や解釈に迷う部分があれば、遠慮なく担当部署に説明を求めましょう。口頭での説明と就業規則の記載内容に相違がないかも重要なチェックポイントです。

不明点は専門家(社会保険労務士など)への相談も有効

会社の担当部署に確認したり、就業規則を読んだりしても、疑問が解消されない場合や、会社の対応に納得がいかない、法的に問題がないか不安な場合は、労働問題や社会保険の専門家に相談することも有効な手段です。

主な相談先としては、以下のような専門家や機関があります。

相談先主な相談内容特徴
社会保険労務士(社労士)傷病手当金、就業規則、賃金、労働条件全般労働・社会保険の専門家。企業の労務管理にも詳しいため、会社の規定の妥当性についてもアドバイスが期待できます。
加入している健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)傷病手当金の制度そのもの、申請手続き傷病手当金の支給主体であり、制度に関する正確な情報が得られます。
労働基準監督署(総合労働相談コーナー)労働基準法違反の疑い、解雇、賃金未払いなど労働法規に関する相談や情報提供。会社への指導や助言を行うこともあります。
弁護士法的な紛争、会社との交渉、訴訟法的なトラブル解決の専門家。会社との間で紛争が生じている、またはその可能性がある場合に頼りになります。

専門家に相談する際は、事前に就業規則、給与明細、傷病手当金に関する書類など、関連する資料を整理し、質問したい内容をまとめておくとスムーズです。多くの社会保険労務士会や法テラス(収入などの利用条件あり)では無料相談窓口を設けている場合もありますので、まずはそういった機会を利用してみるのも良いでしょう。厚生労働省委託事業の「労働条件相談ほっとライン」なども活用できます。

傷病手当金とボーナスに関する問題は、個々の状況によって対応が異なるため、正確な情報を得て、ご自身にとって最善の対応をすることが重要です。これらの確認ポイントを参考に、後悔のないようにしっかりと準備を進めましょう。

まとめ

傷病手当金を受給中にボーナスが支給されるかは、勤務先の就業規則や賃金規程によって異なります。仮にボーナスが支給された場合でも、原則として傷病手当金が減額されることはありません。これは、ボーナス(賞与)が傷病手当金の支給額算定の基礎となる標準報酬月額の算定に含まれないためです。ただし、支給されたボーナスからは健康保険料や厚生年金保険料、所得税が引かれます。傷病手当金自体は非課税ですので、この違いを理解しておくことが大切です。ご自身の状況を正確に把握するためには、必ず勤務先の担当部署や就業規則を確認しましょう。

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