傷病手当金の支給額はどう決まる?標準報酬月額の計算への影響を徹底ガイド

退職のミカタ

傷病手当金の支給額が、ご自身の「標準報酬月額」とどう関係しているか、疑問に思っていませんか?この記事を読めば、傷病手当金の正確な計算方法と、標準報酬月額が支給額に与える具体的な影響が明確になります。支給額は、原則として支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均を基に計算されます。計算ステップ、具体例、標準報酬月額が変わる場合の注意点まで、網羅的に解説します。

目次

傷病手当金とは?標準報酬月額との基本的な関係

会社員や公務員などが加入する健康保険には、病気やケガで働けなくなった際に所得を補償してくれる制度があります。その代表的なものが「傷病手当金」です。もしもの時に私たちの生活を支える重要なセーフティネットとなります。

この傷病手当金の支給額を計算する上で、切っても切り離せないのが「標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)」です。標準報酬月額は、毎月の給与などの報酬を基に決定され、健康保険料や厚生年金保険料の計算だけでなく、傷病手当金のような保険給付の額を算出する際の基礎となります。

簡単に言えば、傷病手当金は、標準報酬月額をベースに計算されるということです。そのため、標準報酬月額が高ければ傷病手当金の支給額も多くなり、逆に標準報酬月額が低ければ支給額も少なくなる傾向にあります。この基本的な関係性を理解しておくことが、傷病手当金の制度を正しく理解し、ご自身の状況に当てはめて考えるための第一歩となります。

具体的に傷病手当金がどのような制度なのか、そして標準報酬月額がどのように関わってくるのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

  • 傷病手当金:健康保険の被保険者が、業務外の事由による病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給される、生活を保障するための制度です。
  • 標準報酬月額:健康保険や厚生年金保険において、保険料や保険給付額を計算するための基準となる金額です。被保険者が受け取る給与などの報酬を、一定の幅で区分した等級に当てはめて決定されます。

この章ではまず、この二つの基本的な概念と、傷病手当金の支給額決定における標準報酬月額の重要性について解説しました。次の章からは、標準報酬月額そのものについて、さらに詳しく掘り下げていきます。

傷病手当金の計算基礎となる標準報酬月額とは

傷病手当金の支給額を理解する上で、「標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)」は非常に重要なキーワードです。なぜなら、傷病手当金の1日あたりの支給額は、この標準報酬月額を基にして計算されるからです。この章では、傷病手当金の計算の土台となる標準報酬月額について、その定義、役割、決定方法、そしてご自身の標準報酬月額を確認する方法まで、詳しく解説していきます。

標準報酬月額の定義と役割

標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険の保険料や、傷病手当金・出産手当金・年金額といった保険給付の額を計算するために用いられる基準額のことです。被保険者(従業員)が事業主から受け取る給与、賃金、手当などの「報酬」を、一定の金額幅(等級)で区分したものが標準報酬月額となります。

この制度があることで、毎月の細かな給与変動に左右されずに、保険料や給付額の計算を一定期間、簡略化し、公平性を保つことができます。傷病手当金においては、療養開始日以前の標準報酬月額が、受け取れる金額を左右する直接的な要因となります。

標準報酬月額の等級は、健康保険(協会けんぽの場合、第1級の5万8千円から第50級の139万円まで)と厚生年金保険(第1級の8万8千円から第32級の65万円まで)でそれぞれ定められています。(令和6年度時点)

標準報酬月額の決定方法

標準報酬月額は、常に一定というわけではありません。年に一度の見直しや、給与の大幅な変動があった場合などに改定されます。主な決定・改定のタイミングは以下の3つです。

決定・改定方法対象者算定基礎適用期間
定時決定7月1日現在の全被保険者4月・5月・6月の報酬平均額その年の9月~翌年8月
随時改定固定的賃金に変動があり、一定の条件を満たした被保険者変動後3ヶ月間の報酬平均額改定月~次の定時決定(または再度の随時改定)まで
資格取得時決定新たに被保険者資格を取得した者資格取得時の報酬額資格取得日~原則としてその年の8月まで(※)

※ 6月1日から12月31日までに資格取得した場合は、翌年の8月までとなります。

定時決定

定時決定は、毎年1回、原則として7月1日時点での全被保険者を対象に行われる標準報酬月額の見直しです。「算定基礎届」を事業主が日本年金機構(または健康保険組合)に提出することで行われます。具体的には、その年の4月、5月、6月の3ヶ月間に支払われた報酬(給与、手当など)の平均額を算出し、標準報酬月額等級表に当てはめて新しい標準報酬月額を決定します。この決定された標準報酬月額は、原則としてその年の9月から翌年の8月までの各月に適用されます。ただし、計算対象となる月に支払基礎日数(給与計算の対象となる日数)が17日(特定適用事業所等に勤務する短時間労働者は11日)未満の月がある場合は、その月を除外して計算します。

随時改定

随時改定は、昇給や降給などにより「固定的賃金」に変動があり、一定の条件を満たした場合に行われる標準報酬月額の見直しです。「月額変更届」を提出することで行われます。具体的には、以下の3つの条件すべてに該当した場合に対象となります。

  1. 昇給・降給、給与体系の変更などで固定的賃金(基本給、役職手当、通勤手当など、月ごとに変動しない賃金)に変動があった。
  2. 固定的賃金の変動があった月以後、継続した3ヶ月間に支払われた報酬の平均月額から算出した標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
  3. 変動があった月からの3ヶ月間すべてにおいて、支払基礎日数が17日(特定適用事業所等に勤務する短時間労働者は11日)以上ある。

随時改定によって決定された新しい標準報酬月額は、固定的賃金の変動があった月から起算して4ヶ月目の月から適用され、次の定時決定(または再度の随時改定)が行われるまで有効となります。

資格取得時決定

資格取得時決定は、会社への入社などにより、新たに健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を取得した際に行われる標準報酬月額の決定です。「被保険者資格取得届」を提出する際に、雇用契約などで定められた初任給などの報酬額に基づいて標準報酬月額を決定します。ここで決定された標準報酬月額は、原則として資格を取得した日からその年の8月まで適用されます。ただし、6月1日から12月31日までの間に資格を取得した場合は、翌年の8月まで適用されます。

自分の標準報酬月額を確認する方法

傷病手当金の申請や将来の年金額の見通しを立てる上で、ご自身の標準報酬月額を把握しておくことは大切です。確認する方法はいくつかあります。

  • 給与明細を確認する: 会社によっては、給与明細に「標準報酬月額」や、それに対応する「健康保険等級」「厚生年金等級」が記載されている場合があります。控除されている健康保険料や厚生年金保険料から推測することも可能です。
  • 健康保険証を確認する: 協会けんぽ(全国健康保険協会)など一部の保険者では、健康保険被保険者証に標準報酬月額が記載されていない場合がありますが、加入している健康保険組合によっては記載があるケースもあります。
  • ねんきん定期便を確認する: 毎年誕生月に日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」には、厚生年金保険の標準報酬月額の記録が記載されています。直近の状況を確認できます。
  • 勤務先の担当部署(人事・総務など)に確認する: 最も確実な方法です。会社の給与計算や社会保険手続きを担当している部署に直接問い合わせてみましょう。
  • 加入している健康保険組合または協会けんぽに問い合わせる: ご自身が加入している保険者に問い合わせる方法もありますが、個人情報保護の観点から、電話での回答が難しい場合や、書面での開示請求が必要な場合があります。

これらの方法で、ご自身の標準報酬月額を確認し、傷病手当金の受給額の見込みなどを把握しておくとよいでしょう。

傷病手当金の支給額 具体的な計算方法を解説

病気やケガで仕事を休むことになった際、生活を支える重要な制度が傷病手当金です。この傷病手当金の支給額は、あなたの「標準報酬月額」に基づいて計算されます。ここでは、その具体的な計算方法をステップごとに詳しく解説していきます。

傷病手当金の支給額 計算式

傷病手当金の1日あたりの支給額は、以下の計算式で算出されます。

1日あたりの支給額 = (支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額) ÷ 30日 × (2/3)

この計算式に出てくる重要な要素は以下の通りです。

  • 支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額: 傷病手当金の支給が始まる日の前、1年間の標準報酬月額が計算の基礎となります。
  • 30日: 標準報酬月額を日額に換算するために用いられる固定の数値です。
  • 2/3: 算出した標準報酬日額にこの割合を掛けることで、1日あたりの支給額が決まります。

なお、健康保険に加入してから12ヶ月に満たない場合は、計算方法が異なります。具体的には、以下のいずれか低い方の額を用いて計算されます。

  1. 支給開始日以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額
  2. 前年度9月30日における、全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額(※加入している健康保険組合等によって定められた額)

どちらの額が適用されるかは、ご自身の加入状況や加入している健康保険組合(協会けんぽや各企業の健康保険組合など)にご確認ください。

標準報酬月額を使った計算ステップ

傷病手当金の支給額を計算するための具体的な手順を、ステップごとに見ていきましょう。

  1. ステップ1: 支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額を確認する
    まず、傷病手当金の支給が始まる日(支給開始日)を確認します。そして、その日が含まれる月より前の、連続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を調べます。標準報酬月額は、給与明細や、ねんきん定期便、または加入している健康保険組合(協会けんぽなど)に問い合わせることで確認できます。

  2. ステップ2: 12ヶ月間の標準報酬月額の平均額を計算する
    ステップ1で確認した12ヶ月分の標準報酬月額をすべて合計し、12で割って平均額を算出します。
    例: (月額1 + 月額2 + … + 月額12) ÷ 12 = 平均額

  3. ステップ3: 平均額を30で割って「標準報酬日額」相当額を求める
    ステップ2で算出した平均額を30日で割ります。これにより、1日あたりの標準報酬額(標準報酬日額)に相当する金額が分かります。
    例: 平均額 ÷ 30日 = 標準報酬日額相当額

  4. ステップ4: 標準報酬日額相当額に3分の2を掛けて「1日あたりの支給額」を算出する
    ステップ3で求めた標準報酬日額相当額に3分の2(約66.7%)を掛けます。これが、実際に支給される傷病手当金の1日あたりの金額となります。(小数点以下第一位を四捨五入)
    例: 標準報酬日額相当額 × (2/3) = 1日あたりの支給額

  5. ステップ5: 支給対象日数に応じた総支給額を計算する(任意)
    実際に受け取る総額を知りたい場合は、ステップ4で算出した1日あたりの支給額に、傷病手当金の支給対象となる日数(休業日数から待期期間の3日間を除く)を掛けることで、おおよその総支給額を計算できます。
    例: 1日あたりの支給額 × 支給対象日数 = 総支給額(目安)


これらのステップを踏むことで、ご自身の傷病手当金の支給額の目安を知ることができます。

具体例で見る傷病手当金の支給額シミュレーション

具体的なケースを想定して、傷病手当金の支給額をシミュレーションしてみましょう。ここでは、協会けんぽ(全国健康保険協会)加入者を例とします。

【例1】支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額がずっと30万円だったAさんの場合

ステップ計算内容計算結果
ステップ1支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額各月 300,000円
ステップ212ヶ月間の標準報酬月額の平均額(300,000円 × 12ヶ月) ÷ 12 = 300,000円
ステップ3標準報酬日額相当額300,000円 ÷ 30日 = 10,000円
ステップ41日あたりの支給額10,000円 × (2/3) = 6,667円 (小数点以下第一位四捨五入)

Aさんの場合、傷病手当金の1日あたりの支給額は6,667円となります。

【例2】支給開始日以前12ヶ月間に標準報酬月額の変動があったBさんの場合

  • 支給開始日の6ヶ月前まで: 標準報酬月額 28万円
  • 支給開始日の5ヶ月前から現在まで: 標準報酬月額 32万円
ステップ計算内容計算結果
ステップ1支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額280,000円 (7ヶ月分), 320,000円 (5ヶ月分)
ステップ212ヶ月間の標準報酬月額の平均額{(280,000円 × 7ヶ月) + (320,000円 × 5ヶ月)} ÷ 12ヶ月 = (1,960,000円 + 1,600,000円) ÷ 12 = 3,560,000円 ÷ 12 = 296,666.6…円
ステップ3標準報酬日額相当額296,667円 ÷ 30日 = 9,888.9…円 (※計算途中では端数処理せず、平均額を用いるのが望ましい)
ステップ41日あたりの支給額9,889円 × (2/3) = 6,593円 (小数点以下第一位四捨五入)

Bさんの場合、標準報酬月額の変動を考慮した結果、1日あたりの支給額は6,593円となります。

【例3】健康保険加入期間が8ヶ月(支給開始日以前)で、標準報酬月額がずっと26万円だったCさんの場合

このケースでは、加入期間が12ヶ月に満たないため、特例計算が適用される可能性があります。ここでは、以下の2つを比較します。

  1. Cさんの加入期間(8ヶ月)の標準報酬月額の平均額:
    (260,000円 × 8ヶ月) ÷ 8 = 260,000円
  2. 前年度9月30日時点の全被保険者の平均標準報酬月額(仮に30万円とする):
    300,000円

この場合、①の26万円の方が低いため、こちらを用いて計算します。

ステップ計算内容計算結果
ステップ2相当計算に用いる標準報酬月額260,000円
ステップ3標準報酬日額相当額260,000円 ÷ 30日 = 8,666.6…円
ステップ41日あたりの支給額8,667円 × (2/3) = 5,778円 (小数点以下第一位四捨五入)

Cさんの場合、加入期間が短いため特例が適用され、1日あたりの支給額は5,778円となります。

※注意点: 上記シミュレーションはあくまで計算例です。実際の支給額は、加入している健康保険組合や個別の状況によって異なる場合があります。正確な金額については、必ずご自身の健康保険組合にご確認ください。

標準報酬月額が変わると傷病手当金の支給額はどうなる?

傷病手当金の支給額は、ご自身の標準報酬月額に基づいて計算されます。では、もし給与の変動などで標準報酬月額が変わった場合、傷病手当金の支給額にはどのような影響があるのでしょうか。ここでは、その基準となる考え方と注意点を詳しく解説します。

支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額が基準

傷病手当金の1日あたりの支給額を計算する上で最も重要なのが、「支給開始日」以前の「継続した12ヶ月間」の各月の標準報酬月額です。具体的には、この12ヶ月間の標準報酬月額をすべて合計し、12で割って平均額を算出します。この平均額が、傷病手当金の計算基礎となります。

「支給開始日」とは、最初に傷病手当金の支給が始まった日のことを指します。例えば、令和6年5月10日から傷病手当金を受け取り始めた場合、その前月である令和6年4月以前の12ヶ月間(令和5年5月~令和6年4月)の標準報酬月額が計算の対象となります。

この12ヶ月間の平均を用いる理由は、月々の給与変動による影響を平準化し、より安定した生活保障を提供するためです。

なお、就職や転職などにより、支給開始日以前の健康保険の加入期間が12ヶ月に満たない場合は、計算方法が異なります。この場合は、以下のいずれか低い方の額を計算基礎として用います。

  • 支給開始日以前の、継続した各月の標準報酬月額の平均額
  • 前年度9月30日時点における、ご加入の健康保険の全被保険者の標準報酬月額の平均額(保険者によって基準日が異なる場合があります。例:協会けんぽの場合)

ご自身の加入期間が12ヶ月未満の場合は、加入している健康保険組合や協会けんぽに確認することをおすすめします。

途中で標準報酬月額が変わった場合の注意点

傷病手当金の計算基準となる「支給開始日以前の12ヶ月間」の間に、昇給や降給によって標準報酬月額が変更(定時決定や随時改定など)された場合はどうなるのでしょうか。

この場合、変更後の標準報酬月額も含めて、単純に12ヶ月間の各月の実績に基づいて平均額を計算します。例えば、支給開始日が令和6年5月10日で、計算対象期間(令和5年5月~令和6年4月)のうち、令和5年9月から昇給により標準報酬月額が上がったとします。この場合、令和5年5月~8月は変更前の標準報酬月額、令和5年9月~令和6年4月は変更後の高い標準報酬月額を使って、12ヶ月間の平均額を算出します。

ここで重要な注意点は、一度決定された傷病手当金の計算基礎(=12ヶ月間の標準報酬月額の平均額)は、原則として、その後の支給期間中に変動しないということです。つまり、傷病手当金の受給を開始した後に給与が変動し、標準報酬月額が変わったとしても、既に決まっている傷病手当金の日額には影響しません。

傷病手当金の支給額は、あくまで「支給開始日」時点を基準とした過去12ヶ月間の標準報酬月額によって決定される、という点をしっかり理解しておきましょう。これにより、受給期間中の収入をある程度予測することが可能になります。

傷病手当金と標準報酬月額に関する注意点とQ&A

傷病手当金を受給するにあたり、標準報酬月額との関係で疑問に思う点や注意すべき点が出てくることがあります。ここでは、よくある質問とその回答、知っておくべきポイントを解説します。

支給期間と標準報酬月額の関係

傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6ヶ月です。この期間の計算において、標準報酬月額はどのように関わってくるのでしょうか。

傷病手当金の1日あたりの支給額は、「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3」で計算されます。ここで重要なのは、計算の基礎となる標準報酬月額は、支給開始日時点の過去12ヶ月間の平均で固定されるという点です。

つまり、傷病手当金の支給を受けている期間中に、本来の標準報酬月額が改定されるような状況(例えば、定時決定や随時改定の時期に該当するなど)があったとしても、すでに決定されている傷病手当金の1日あたりの支給額が変動することはありません。支給期間満了まで、最初に計算された日額で支給が継続されます。

Q&A:支給期間中の昇給について

Q. 傷病手当金の支給期間中に会社で昇給があり、標準報酬月額が上がりました。傷病手当金の額も増えますか?

A. 原則として増えません。傷病手当金の額は、あくまで支給開始日より前の12ヶ月間の標準報酬月額の平均に基づいて計算されます。支給期間中の標準報酬月額の変動は、支給額に影響しません。

退職後の傷病手当金と標準報酬月額

会社の健康保険に加入していた方が、一定の条件を満たせば退職後も傷病手当金を受給できる場合があります。この場合の標準報酬月額の扱いはどうなるのでしょうか。

退職後に傷病手当金を受給するための主な条件は以下の2つです。

  • 健康保険の被保険者資格を喪失した日の前日(退職日)までに、継続して1年以上の被保険者期間があること。
  • 資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受けられる状態(労務不能であり、待期期間を満たしているが給与が支払われていたため支給されていなかった場合など)であること。

これらの条件を満たして退職後も傷病手当金を受給する場合、その支給額の計算基礎となる標準報酬月額は、在職中に決定されたもの(支給開始日以前12ヶ月間の平均)がそのまま適用されます。退職したからといって、計算方法が変わるわけではありません。

Q&A:退職後の保険料と任意継続

Q. 退職して傷病手当金をもらう場合、健康保険料はどうなりますか?

A. 退職すると会社の健康保険の資格は喪失します。傷病手当金は受給できますが、健康保険については国民健康保険に加入するか、ご家族の健康保険の被扶養者になるなどの手続きが必要です。その場合、加入する保険制度の保険料は自己負担となります。傷病手当金の受給資格自体には影響しません。

Q. 任意継続被保険者制度を利用する場合、傷病手当金はどうなりますか?

A. 任意継続被保険者になった後に新たに申請することはできませんが、在職中にすでに傷病手当金の支給が開始されていれば、任意継続中も引き続き受給できます。支給額は在職中の標準報酬月額に基づいて計算され、保険料は全額自己負担になります。

傷病手当金受給中の社会保険料と標準報酬月額

病気やケガで会社を休んで傷病手当金を受給している間も、在職中であれば健康保険・厚生年金保険の被保険者資格は継続します。そのため、社会保険料の支払い義務は発生します。

ここで注意が必要なのは、社会保険料の計算基礎となる標準報酬月額です。これは、傷病手当金の額ではなく、休業前の給与などに基づいて決定された標準報酬月額が適用されます。たとえ給与が支払われていなくても、標準報酬月額に応じた社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料(40歳以上))は発生し、納付する必要があります。

通常、社会保険料は給与から天引きされますが、休業により給与が支払われない場合は、会社が立て替えて後日精算したり、直接会社に支払ったりするなど、納付方法について会社と相談する必要があります。

状況保険料計算の基礎となる標準報酬月額社会保険料の負担
在職中(傷病手当金受給、給与の一部支給あり)休業前の給与等に基づき決定された標準報酬月額発生する(給与から天引きされることが多い)
在職中(傷病手当金受給、給与支給なし)休業前の給与等に基づき決定された標準報酬月額発生する(納付方法を会社と要相談)
退職後(傷病手当金受給)-(会社の健康保険・厚生年金の資格は喪失)会社の社会保険料負担はなし(国保等に加入する場合はその保険料を自己負担)

Q&A:傷病手当金からの天引きについて

Q. 傷病手当金から社会保険料は天引きされますか?

A. いいえ、傷病手当金から直接社会保険料が天引きされることはありません。傷病手当金は非課税であり、社会保険料の徴収対象となる「報酬」には該当しないためです。保険料は別途納付する必要があります。

まとめ

傷病手当金の支給額は、健康保険の加入期間中の給与に基づいて決定される「標準報酬月額」が重要な鍵を握ります。支給額は、原則として支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各標準報酬月額を平均し、その3分の2相当額となります。そのため、ご自身の標準報酬月額がいくらなのか、また、それがいつどのように決まるのかを理解しておくことが不可欠です。この記事で解説した計算方法や注意点を参考に、万が一の際に慌てないよう備え、正確な申請につなげましょう。

退職給付金の受給手続きを行うためには、正確な手続きと専門的な知識が必要です。
しかし、手続きの複雑さや専門知識の不足でお困りの方も多いのではないでしょうか?「退職のミカタ」なら、業界最安レベルの価格で安心してご利用いただけます。「退職のミカタ」のコンテンツを利用することで、退職前から退職後まで、いつ・どこで・何をすればいいのかを、確認しながら進めていくことができます。退職給付金についてお困りの方は、ぜひ「退職のミカタ」のご利用をご検討ください!

退職のミカタ
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次