労務不能と認めた期間が初診日より前でも傷病手当金はもらえる?

退職のミカタ

「体調が悪くて休んだけれど、病院へ行くのが遅れてしまった…」初診日より前の労務不能期間について、傷病手当金が支給されるか?ということについて解説しています。

目次

傷病手当金とは 制度の基本をおさらい

傷病手当金は、会社の健康保険(健康保険組合や協会けんぽなど)に加入している被保険者が、業務外の病気やケガが原因で会社を休み、事業主から十分な給与(報酬)を受けられない場合に、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた所得保障制度です。安心して療養に専念できるよう、経済的なサポートを提供することを目的としています。この章では、傷病手当金制度の基本的な仕組みについて、支給要件、支給期間、支給額を中心に解説します。

傷病手当金の4つの支給要件を確認

傷病手当金を受け取るためには、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。一つでも満たさない場合は、原則として支給対象となりません。申請前にご自身の状況がこれらの要件に合致するか、しっかりと確認しましょう。

要件内容補足
1. 業務外の事由による病気やケガのための療養であること健康保険の給付対象となる病気やケガの治療(自宅療養を含む)を受けていること。仕事中や通勤中のケガ(労災保険の対象)や、美容整形など病気と見なされないものは対象外です。
2. 療養のために仕事に就くことができないこと(労務不能)療養担当の医師が「労務不能」であると判断・証明していること。自己判断ではなく、医師の医学的な判断に基づき、これまで従事していた業務ができない状態であることが必要です。
3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと病気やケガで仕事を休み始めた日から連続した3日間(待期期間)があり、4日目以降も休んでいること。待期期間の3日間には、有給休暇、土日祝日などの公休日も含まれます。この3日間については傷病手当金は支給されません。給与の支払いがあったかどうかは問いません。
4. 休業した期間について給与の支払いがないこと休んだ期間について、事業主から給与が支払われていないこと。給与が支払われていても、その額が傷病手当金の額より少ない場合は、差額が支給されます。有給休暇を取得した日は、原則として給与が支払われているため対象外となります。

これらの要件を満たしているかどうかが、傷病手当金を受給できるかどうかの最初の判断基準となります。

傷病手当金の支給期間と支給額

傷病手当金がいつからいつまで、どのくらいの金額がもらえるのかは、療養中の生活設計において非常に重要です。ここでは、支給期間と支給額の基本的なルールについて解説します。

支給期間

傷病手当金が支給される期間は、以下のルールに基づいています。

  • 支給開始日: 上記の支給要件で説明した待期期間(連続した3日間)が完成した翌日(4日目)から支給が開始されます。
  • 支給期間の考え方(通算化): 支給を開始した日から通算して最長1年6か月間です。以前は暦の上で1年6か月でしたが、法改正により、期間中に一時的に復職するなどして傷病手当金が支給されなかった期間がある場合、その期間分を後ろに繰り越して、支給された日数の合計が1年6か月に達するまで支給されるようになりました。これにより、より柔軟な働き方や療養が可能になっています。ただし、これは令和4年1月1日以降に支給が開始された傷病手当金に適用されます。

支給額

傷病手当金として1日あたりに支給される金額は、以下の計算式で算出されます。

【支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額】 ÷ 30日 × (2/3)

  • 標準報酬月額とは: 健康保険料や厚生年金保険料の計算の基礎となる、給与など月々の報酬を一定の幅で区分したものです。
  • 支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合: 加入している健康保険組合や協会けんぽの規定により、以下のいずれか低い方の額を用いて計算されます。
    1. 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
    2. 前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額の平均額(協会けんぽの場合)または当該健康保険組合の平均標準報酬月額
  • 給与が一部支払われる場合: 休業期間中に事業主から給与が支払われていても、その額が傷病手当金の計算額より少ない場合は、その差額分が支給されます。給与額が傷病手当金額以上であれば、傷病手当金は支給されません。

傷病手当金は、療養中の大切な収入源となります。制度の基本を正しく理解し、ご自身の状況に合わせて適切に申請手続きを進めましょう。次の章では、今回の記事の核心である「労務不能」と「初診日」の定義について詳しく見ていきます。

傷病手当金における「労務不能」と「初診日」の定義

傷病手当金の申請において、「労務不能」と「初診日」は非常に重要な概念です。これらの定義を正しく理解しておくことが、スムーズな手続きと適切な受給につながります。ここでは、それぞれの定義と判断基準について詳しく解説します。

労務不能とはどのような状態か

傷病手当金における「労務不能」とは、病気やケガにより、これまで従事していた仕事(労務)に就くことができないと医学的に判断された状態を指します。単に体調が悪い、気分がすぐれないといった自己判断だけでは認められません。

具体的には、以下のような状態が労務不能と判断される可能性があります。

  • 医師の指示により入院している場合
  • 医師の指示により自宅療養が必要な場合
  • 病気やケガの影響で、通勤や業務遂行が客観的に不可能な場合

重要なのは、「これまで従事していた仕事(被保険者として加入している健康保険における本来の業務)」ができない状態であるかどうかという点です。例えば、デスクワーク中心の方が、軽い作業なら可能であっても、本来の業務であるパソコン操作や書類作成などが困難であれば、労務不能と判断されることがあります。反対に、療養中でも、医師の許可のもとで、本来の業務とは異なる軽い業務に一時的に従事し、給与が支払われた場合は、その期間は労務不能とはみなされません。

労務不能であるかどうかの判断は、最終的には保険者(全国健康保険協会けんぽ や健康保険組合など)が行いますが、その判断の根拠となるのは医師による医学的な見解です。そのため、傷病手当金の申請には、医師が「労務不能」と認めた期間を証明する書類(傷病手当金支給申請書内の医師の意見欄)が不可欠となります。

初診日とはいつを指すのか

傷病手当金における「初診日」とは、支給対象となる傷病の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指します。自己判断で市販薬を服用したり、整骨院・接骨院(柔道整復師)や鍼灸院(はり師・きゅう師)を受診した日は、原則として初診日とは認められません。

初診日の特定は、傷病手当金の支給開始日(待期期間の起算日)や支給期間の計算に直接関わるため、非常に重要です。具体的にどのような日が初診日となるか、いくつかのケースを見てみましょう。

ケース初診日の考え方具体例
最初に受診した医療機関その傷病について最初に医師の診療を受けた日が初診日となります。発熱と咳でA内科クリニックを最初に受診した日が初診日。その後、症状が悪化しB総合病院に転院しても、初診日はA内科クリニックを受診した日となります。
受診したが診断がつかなかった場合最初に医師の診療を受けた日が初診日となります。後日、別の医療機関で診断が確定した場合でも、最初の受診日が初診日です。腹痛でC医院を受診したが原因不明。後日、D大学病院で検査を受け病名が判明した場合でも、初診日はC医院を受診した日となります。
健康診断で異常を指摘された場合健康診断を受けた日ではなく、その結果に基づき初めて医療機関で医師の診療を受けた日が初診日となります。会社の健康診断で要精密検査となり、E循環器科を受診した日が初診日となります。健康診断を受けた日ではありません。
同一傷病が再発した場合社会的治癒(症状が改善し、相当期間、通院や服薬の必要なく通常の社会生活を送っていた状態)が認められれば、再発後に初めて医師の診療を受けた日が新たな初診日となる場合があります。社会的治癒が認められない場合は、最初の初診日が引き継がれます。うつ病で治療を受け寛解。2年間通院せず問題なく勤務していたが、再び症状が悪化しFメンタルクリニックを受診した場合、社会的治癒が認められればFメンタルクリニックの受診日が新たな初診日となる可能性があります。

このように、初診日は個々の状況によって判断が異なります。「労務不能となった日」と「初診日」が必ずしも一致するとは限らない点にも注意が必要です。不明な点があれば、加入している健康保険組合や協会けんぽ、または医療機関のソーシャルワーカーなどに相談することをおすすめします。

労務不能と認めた期間が初診日より前の場合 傷病手当金の原則的な考え方

病気やケガで仕事を休む際、体調が悪化してから実際に医療機関を受診する(初診日)までに時間がかかることがあります。「仕事を休んでいた期間」と「初診日」がずれている場合、初診日よりも前の休業期間について傷病手当金が支給されるのか、疑問に思う方も多いでしょう。ここでは、傷病手当金の支給における原則的な考え方について解説します。

原則は初診日以降の労務不能期間が対象

傷病手当金の支給対象となる労務不能期間は、原則として「初診日」以降の、療養のために労務に服することができない期間と定められています。これは、傷病手当金の支給要件を満たしているかどうかを判断する上で、医師による医学的な証明が不可欠であるためです。

たとえご自身の判断で仕事を休み、療養していた期間があったとしても、医師がその傷病による「労務不能」状態を医学的に証明できるのは、基本的に診察を開始した初診日以降となります。したがって、初診日よりも前の期間については、原則として傷病手当金の支給対象とはなりません。

傷病手当金の支給を受けるためには、労務不能となった日から連続して3日間の待期期間を満たす必要があります。この待期期間も、初診日以降の労務不能な日(公休日や有給休暇を取得した日も含む)で完成させる必要があります。

なぜ初診日以降の期間が原則となるのか

傷病手当金の対象期間が原則として初診日以降とされるのには、主に以下の理由があります。

1. 医学的証明の客観性担保
傷病手当金は、申請者が病気やケガにより働くことができない状態(労務不能)であることを証明する必要があります。医師による診察(初診)が行われて初めて、その傷病が原因で労務不能であるという客観的な医学的判断が可能になります。初診日前の状態については、医師が直接診察していないため、労務不能であったことを後から医学的に証明することは一般的に困難です。

2. 制度運用上の起点の明確化
健康保険制度における傷病手当金は、医師の診断(初診)を療養の開始、すなわち給付の起点を判断する重要な基準としています。支給要件の確認、支給期間の算定など、多くの事務手続きがこの初診日を基点として行われます。明確な基準日を設けることで、制度の公平かつ効率的な運用を確保しています。

3. 不正受給リスクの防止
もし自己申告に基づいて初診日前の期間が容易に認められるようになると、労務不能であった事実の客観的な確認が難しくなり、制度の趣旨に反する申請や不正受給を招く可能性が高まります。初診日という客観的な基準を設けることは、公的な医療保険制度の信頼性を維持する上で不可欠な要素です。

これらの理由から、傷病手当金の支給においては、医師による客観的な証明と制度の公平性を確保する観点から、初診日以降の労務不能期間を対象とすることが原則となっています。ただし、特定の条件下では例外的に初診日前の期間が考慮される可能性もありますが、あくまで原則はこの考え方に基づいています。

例外的に初診日より前の労務不能期間が認められるケースとは

傷病手当金の支給対象となる労務不能期間は、原則として「初診日」以降と定められています。しかし、一定の条件下では、例外的に初診日より前の労務不能期間が認められる可能性があります。ここでは、その具体的なケースについて詳しく解説します。

ただし、これらのケースに該当する場合でも、最終的な判断は加入している健康保険組合や協会けんぽ(全国健康保険協会)が行います。申請すれば必ず認められるわけではない点に注意が必要です。

受診が遅れたことに相当な理由があると判断される場合

病気やケガで労務不能状態にあったにもかかわらず、やむを得ない理由で医療機関の受診が遅れてしまった場合、その遅れた期間についても労務不能と認められることがあります。「相当な理由」があったかどうかは、保険者が個別の状況を客観的に見て判断します。

具体例 自己判断で自宅療養を続けていた

例えば、発熱や倦怠感などの症状があったものの、当初は風邪など軽微なものと考え、市販薬を服用するなどして自宅で様子を見ていたケースが考えられます。しかし、数日経っても症状が改善せず、あるいは悪化したため、ようやく医療機関を受診したという場合です。

この場合、なぜ自己判断での療養を選択したのか、その間の症状の経過、そして最終的に受診に至った経緯などを具体的に説明する必要があります。単に「大丈夫だと思った」という主観的な理由だけでは不十分であり、症状の記録や、家族など第三者の証言などが、判断の助けになる可能性があります。

具体例 休日や夜間で医療機関を受診できなかった

症状が出始めたのが土日祝日や年末年始、あるいは深夜であり、近隣の医療機関が診療時間外であったために、すぐに受診できなかったというケースも考えられます。例えば、金曜日の夜に急な腹痛で動けなくなったが、救急搬送されるほどではないと判断し、翌週月曜日の診療開始を待って受診した場合などです。

この場合、労務不能状態が始まった日時と、実際に受診が可能になった日時の関係性が重要になります。休日や夜間であった事実を客観的に示す(カレンダーなど)とともに、救急相談ダイヤル(#7119など)への相談履歴や、やむを得ず受診できなかった状況を具体的に説明することが求められます。

医師が初診日前の労務不能を医学的に証明できる場合

受診が遅れた理由の如何に関わらず、担当医師が医学的な見地から「初診日よりも前から労務不能な状態であった」と証明できる場合も、その期間が認められる可能性があります。これは、医師が患者の症状や状態を専門的に評価し、労務不能であったと判断できる場合に限られます。

医師による証明には、初診時の問診内容、診察所見、検査結果などから総合的に判断されます。例えば、初診時に「〇日前から高熱と関節痛で全く動けなかった」という患者の訴えがあり、診察や検査の結果、その訴えと症状の医学的な整合性が取れ、医師が「初診日前の〇日間も労務不能であった蓋然性が極めて高い」と判断した場合などが考えられます。

この場合、傷病手当金支給申請書の「療養担当者記入欄(医師が記入する欄)」に、初診日前の労務不能期間に関する具体的な医学的根拠を記載してもらうことが不可欠です。医師によっては、初診日前の状態について断定的な証明をすることが難しい場合もあるため、申請前に医師へ相談しておくことが重要です。

ケース主な証明の主体証明・説明すべき内容判断のポイント必要な情報・書類(例)
受診が遅れた相当な理由申請者本人(+状況証拠)受診できなかった客観的な事情・やむを得ない状況社会通念上、受診遅延がやむを得ないと保険者が判断できるか申立書、当時の状況を示す資料(カレンダー、相談記録等)、症状経過のメモ
医師による医学的証明医師初診日前の期間が医学的に労務不能であったこととその根拠医学的見地からの合理性・一貫性、医師による明確な証明があるか医師の意見書(申請書への詳細記載)、診断書(詳細な経過記載)、検査結果等

これらの例外ケースに該当する可能性がある場合は、諦めずに申請を検討する価値があります。ただし、申請にあたっては、次の章で解説する注意点を十分に理解しておくことが重要です。

初診日より前の労務不能期間で傷病手当金を申請する際の注意点

傷病手当金の支給対象となる労務不能期間は、原則として「初診日」以降とされています。しかし、やむを得ない事情がある場合には、例外的に初診日より前の期間についても認められる可能性があります。ただし、その申請には通常よりも慎重な対応と、いくつかの重要な注意点があります。ここでは、初診日前の労務不能期間について傷病手当金を申請する際に、特に押さえておくべきポイントを解説します。

医師による労務不能期間の証明が重要

初診日より前の期間について傷病手当金の支給を求める場合、その期間も確かに労務不能であったことを医学的に証明することが最も重要になります。通常の申請では初診日以降の労務不能を医師が証明しますが、初診日前の期間については、医師が診察していない期間の証明となるため、より客観的かつ説得力のある根拠が求められます。

申請にあたっては、担当医師に初診日前に労務不能状態であった具体的な状況(症状の経過、自宅療養の様子、受診できなかった理由など)を正確に伝え、傷病手当金申請書の「療養担当者記入欄」にその旨を記載してもらう必要があります。医師が医学的見地から初診日前の労務不能を認めることができるかどうかが、申請が認められるかの大きな鍵となります。

単に「体調が悪かった」という自己申告だけでは不十分であり、医師が当時の状況を推察し、医学的に労務不能であったと判断できるだけの情報提供と、それに基づく医師の証明が不可欠です。

申立書など追加書類が必要になる可能性

通常の傷病手当金支給申請書に加えて、なぜ初診日前の期間についても申請する必要があるのか、なぜすぐに受診できなかったのかといった事情を説明するための「申立書」や、状況を裏付ける客観的な資料の提出を求められることが一般的です。どのような書類が必要になるかは、加入している健康保険組合や協会けんぽ、個別の状況によって異なります。

例えば、以下のような書類が考えられます。

  • 申立書(理由書): 受診が遅れた具体的な理由、初診日前の症状の経過、自己判断での療養状況などを詳細に記載したもの。
  • 受診が遅れた理由を客観的に証明する書類:
    • 医療機関が休診だった場合:医療機関の休診日カレンダーや告知など
    • 予約が取れなかった場合:予約試行の記録(通話履歴など、ただし証明は難しい場合が多い)
    • 救急搬送された場合:搬送証明書など
  • その他保険者が必要と認める書類

これらの追加書類は、申請者の主張を補強し、保険者が客観的に判断するための重要な材料となります。事前に保険者に必要書類を確認し、不備なく準備することが円滑な手続きにつながります。

事業主による休んだ期間の証明も必要

傷病手当金の申請には、医師の証明だけでなく、事業主(勤務先の会社)による「休んだ期間」と「その期間中に給与が支払われなかった(または減額された)こと」の証明が必須です。これは、初診日前の期間について申請する場合も同様です。

申請者は、初診日前の期間も含めて、実際に労務に服することができずに会社を休んでいたことを、事業主に正確に証明してもらう必要があります。事業主は、出勤簿やタイムカードなどの勤怠記録に基づき、申請書に休んだ期間や賃金の支払い状況を記載します。

初診日前の期間は、自己判断での欠勤として扱われている可能性もあるため、傷病手当金の申請を行う旨を事前に事業主に相談し、認識を共有しておくことが重要です。特に、有給休暇を取得していた期間は原則として傷病手当金の対象外となるため、注意が必要です(ただし、有給休暇の賃金が傷病手当金の額より少ない場合は差額が支給される可能性があります)。

加入している健康保険組合や協会けんぽへの事前確認

初診日前の労務不能期間に関する取り扱いは、最終的な判断を行う保険者(加入している健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ))によって、その基準や求められる書類、手続きが異なる場合があります。例外的なケースであるため、画一的な対応が難しい側面もあります。

そのため、申請書類を提出する前に、必ずご自身が加入している健康保険組合または協会けんぽの担当窓口に事前相談・確認を行うことを強く推奨します。相談の際には、ご自身の状況(傷病名、初診日、労務不能となった日、受診が遅れた理由など)を具体的に伝え、初診日前の期間について申請が可能か、可能であればどのような手続きや書類が必要かを確認しましょう。

事前の確認を怠ると、書類の不備や認識の齟齬から、申請がスムーズに進まなかったり、不支給と判断されたりする可能性が高まります。以下の表を参考に、確認すべきポイントを整理しておくと良いでしょう。

確認事項確認内容の例
申請の可能性自身の状況(初診日前の労務不能)で申請が受理される可能性があるか
必要書類通常の申請書類以外に必要な書類(申立書、証明書類など)とその書式
医師の証明医師の証明で特に記載が必要な事項、意見書など別途必要な書類の有無
事業主の証明事業主証明欄で特に注意すべき点
判断基準どのような場合に初診日前の労務不能が認められるかの具体的な基準や過去の事例(開示可能な範囲で)
申請手順書類の提出方法、担当窓口、審査にかかる期間の目安

これらの注意点を踏まえ、医師、事業主、そして保険者と十分に連携を取りながら、慎重に申請手続きを進めることが重要です。

傷病手当金と初診日前の労務不能期間に関するよくある質問

傷病手当金の申請において、労務不能期間と初診日の関係は非常に重要です。特に、労務不能と感じていた期間が、実際に医療機関を受診した初診日よりも前にある場合、どのように扱われるのか疑問に思う方も多いでしょう。ここでは、そのようなケースに関するよくある質問とその回答をまとめました。

自己判断で休んだ期間は労務不能と認められますか

傷病手当金の支給要件における「労務不能」は、原則として医師の診断に基づいて判断されます。そのため、ご自身の判断だけで仕事を休んでいた期間については、通常、労務不能とは認められにくいです。傷病手当金の申請には、医師が「労務不能であった」と証明する意見書の提出が必要不可欠となります。

ただし、例外もあります。例えば、受診が遅れたことにやむを得ない理由があり、かつ、医師が診察の結果、初診日前の期間についても医学的に労務不能であったと判断・証明できる場合は、その期間も傷病手当金の対象となる可能性があります。この場合、なぜ受診が遅れたのかを具体的に説明する申立書などの提出を求められることがあります。

自己判断で休む前に、可能な限り早期に医療機関を受診し、医師の指示を仰ぐことが重要です。もし、やむを得ない事情で受診が遅れた場合は、その旨を正直に医師に伝え、労務不能期間の証明について相談しましょう。

複数の病院を受診した場合の初診日はいつになりますか

傷病手当金の申請における「初診日」とは、申請対象となる傷病について、初めて医師の診療を受けた日を指します。複数の医療機関を受診した場合でも、この原則は変わりません。

例えば、以下のようなケースが考えられます。

ケース初診日の考え方補足
最初にAクリニックを受診し、その後紹介状を持ってB大学病院を受診した。Aクリニックを最初に受診した日が初診日となります。傷病名が同じ、または医学的に連続性・関連性が認められる場合です。
体調不良でC内科を受診したが原因が特定できず、後日、別の症状でD整形外科を受診した。それぞれの傷病が医学的に関連がないと判断されれば、C内科を受診した日とD整形外科を受診した日が、それぞれの傷病の初診日となり得ます。傷病手当金の申請対象となる傷病について、最初に診療を受けた日が基準となります。どちらの傷病で申請するかによって初診日が変わります。
Eメンタルクリニックに通院中だったが、自己判断で中断。症状が悪化し、再度同じEメンタルクリニックを受診した。最初にEメンタルクリニックを受診した日が初診日となるのが原則です。社会的治癒(症状が改善し、相当期間、通院や治療の必要がなかった状態)が認められる場合は、再発後の最初の受診日が初診日となることもありますが、判断は保険者(健康保険組合や協会けんぽ)が行います。

どの受診日が初診日と認定されるかは、最終的には加入している健康保険組合や協会けんぽが、医師の意見書や診療報酬明細書(レセプト)などの情報に基づいて判断します。不明な点があれば、事前に保険者に確認することをおすすめします。

初診日前の期間について申請が認められなかった場合の対処法は

初診日より前の労務不能期間について傷病手当金の申請を行ったものの、残念ながら認められなかった(不支給となった)場合、いくつかの対処法が考えられます。

  1. 不支給決定通知書の確認: まず、健康保険組合や協会けんぽから送付される不支給決定通知書の内容をよく確認しましょう。不支給となった理由が具体的に記載されています。理由が「初診日前の期間は証明できないため」など、明確に示されているはずです。

  2. 医師への再相談・追加情報の提出: 不支給理由が、医師による労務不能証明の内容に関するものであれば、再度医師に相談してみましょう。診断書や意見書の追記、あるいは受診が遅れた理由を補足する資料(申立書など)を追加で提出することで、保険者が再考してくれる可能性があります。

  3. 不服申し立て(審査請求): 保険者の決定に納得がいかない場合は、不服申し立て(審査請求)を行うことができます。決定があったことを知った日の翌日から原則3か月以内に、地方厚生局に設置されている社会保険審査官に対して行います。審査請求書に必要な書類を添えて提出します。

  4. 再審査請求: 社会保険審査官の決定にも不服がある場合は、決定書の謄本が送付された日の翌日から原則2か月以内に、厚生労働省に設置されている社会保険審査会に対して再審査請求を行うことができます。

  5. 専門家への相談: 審査請求や再審査請求の手続きは複雑であり、専門的な知識が必要となる場合があります。ご自身での対応が難しいと感じる場合は、社会保険労務士などの専門家に相談することを検討しましょう。状況に応じた適切なアドバイスや手続きの代行を依頼できます。


不服申し立てには期限が定められていますので、手続きを行う場合は迅速に対応することが重要です。ただし、不服申し立てを行っても、必ずしも決定が覆るとは限らない点には留意が必要です。まずは不支給理由を正確に把握し、可能な対応を検討しましょう。

まとめ

傷病手当金は、原則として医師による初診日以降の労務不能と認められた期間が支給対象です。これは、労務不能の医学的判断が初診に基づいて行われるためです。しかし、やむを得ない理由で受診が遅れ、かつ医師が初診日前の労務不能を医学的に証明できる場合には、例外的に初診日より前の期間も対象となる可能性があります。申請にあたっては、医師や事業主による証明、加入している協会けんぽや健康保険組合への事前確認が重要となります。不明な点は必ず確認しましょう。

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