傷病手当金を受給中に病名が変わったらどうなるのか、手続きは必要なのか、不安に思っていませんか?この記事では、傷病手当金の病名変更は可能なのか、受給期間・金額への影響、注意点まで詳しく解説します。
傷病手当金の受給中に病名が変わるケースとは
傷病手当金は、病気やケガのために働くことができず、給与が支払われない場合に、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。受給を開始した後に、医師の診断によって病名が変わることは、実は決して珍しいことではありません。これは、治療を進める中で症状が変化したり、より詳しい検査によって原因が特定されたりするためです。ここでは、傷病手当金の受給中に病名が変わる具体的なケースについて解説します。
当初の診断とは別の病気が判明した場合
最初に診断された病名で傷病手当金の申請を行ったものの、その後の診察や精密検査の結果、労務不能の真の原因が別の病気であったと判明するケースです。これは、初期症状が似ている病気が複数ある場合や、診断が難しい病気の場合に起こり得ます。
例えば、以下のような状況が考えられます。
- 当初「うつ病」と診断されていたが、詳細な問診や経過観察により「双極性障害」であったことが判明した。
- 「胃炎」として治療を開始したが、内視鏡検査などの結果、「胃潰瘍」や「逆流性食道炎」など、より具体的な病名、あるいは異なる病名が確定した。
- 原因不明の体調不良が続いていたが、専門医の診察により「線維筋痛症」や「慢性疲労症候群」などの特定の病名が診断された。
このように、当初の申請時とは異なる病名が診断されたとしても、その新しい病気が原因で労務不能の状態が継続していると医師が判断すれば、原則として傷病手当金の支給は継続されます。
関連する別の病気を併発した場合
最初に診断された病気(原疾患)の治療中に、その病気が原因となったり、関連したりして別の病気を発症(併発)するケースです。原疾患による労務不能状態に加えて、併発した病気によっても労務不能となる、あるいは労務不能の状態がより重くなることがあります。
具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
原疾患 | 併発する可能性のある関連疾患 |
---|---|
糖尿病 | 糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害 |
関節リウマチ | 間質性肺炎、血管炎 |
うつ病 | 不安障害、パニック障害 |
脳梗塞・脳出血 | 高次脳機能障害、麻痺、嚥下障害 |
このように、原疾患と併発した病気の両方が労務不能の原因となっている場合、医師は診断書(傷病手当金支給申請書の療養担当者記入用)に複数の病名を記載することがあります。この場合も、労務不能の状態が医学的に証明されれば、傷病手当金の支給対象となります。
症状の変化で診断名が変わった場合
病気の進行や症状の変化に伴い、医師の診断名が変更されるケースです。これは、病気のステージが変わったり、症状の現れ方からより適切な診断名がつけられたりする場合に起こります。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 当初「適応障害」と診断されていたが、抑うつ症状や意欲低下が改善せず、診断基準を満たしたため「うつ病」に診断名が変更された。
- 「腰椎椎間板ヘルニア」と診断されていたが、症状の悪化や神経所見の変化により「腰部脊柱管狭窄症」を併記、あるいは診断名が変更された。
- 初期症状から「気管支炎」と診断されていたが、症状の遷延や画像検査の結果から「肺炎」や「喘息」など、より重篤な、あるいは異なる病態を示す診断名に変更された。
この場合も、病名が変わったとしても、労務不能という状態が継続していることが重要です。症状の変化によって診断名が変わることは、病気の自然な経過の一部であることも多く、労務不能であると医師が判断する限り、傷病手当金の支給に影響することは通常ありません。
以上のように、傷病手当金の受給中に病名が変わるケースは様々です。重要なのは、病名そのものよりも、その病気によって「労務不能」の状態にあるかどうかという点です。次の章では、病名変更が傷病手当金の受給に具体的にどのような影響を与えるのか、手続きはどうすればよいのかについて詳しく解説していきます。
結論 傷病手当金の病名変更は可能か
傷病手当金を受給している途中で、医師の診断により病名が変わることがあります。「当初の診断とは違う病気だった」「関連する別の病気を併発した」「症状が変化して診断名が変わった」など、理由は様々です。このような場合、「傷病手当金は打ち切られてしまうのでは?」「何か特別な手続きが必要なの?」と不安に感じる方も多いでしょう。
結論から申し上げると、傷病手当金の受給中に病名が変更されたとしても、必ずしも受給が打ち切られたり、複雑な再申請が必要になったりするわけではありません。重要なのは、病名そのものよりも「その病気によって労務不能な状態が継続しているか」という点です。以下で詳しく解説します。
原則として病名変更に伴う再申請は不要
傷病手当金は、病気やケガのために働くことができず、給与の支払いを受けられない被保険者の生活を保障するための制度です。支給の要件は、特定の病名であることではなく、「療養のために労務不能であること」が中心となります。
そのため、当初申請した傷病名から別の傷病名に変更になった場合でも、それが原因で引き続き労務不能状態が続いていると判断されれば、原則として病名変更のみを理由とした再申請(新規申請)は不要です。これまで通り、定期的に傷病手当金支給申請書を提出することで、受給を継続できるケースが一般的です。
ただし、これはあくまで「一連の療養過程における病名変更」や「関連性のある病気」と保険者(全国健康保険協会(協会けんぽ)や各健康保険組合)が判断した場合です。全く無関係の新しい病気で労務不能になった場合は、状況によって判断が異なる可能性もあります。
重要なのは医師による労務不能の証明
傷病手当金の支給において、病名以上に重要視されるのが、医師による「労務不能」であることの証明です。たとえ病名が変わったとしても、その変更後の病気が原因で、あなたが仕事に就くことができない状態(労務不能)であると担当医師が医学的見地から判断し、それを傷病手当金支給申請書の「療養担当者記入用」に記載・証明することが最も重要になります。
保険者は、提出された申請書の内容、特に医師が記入した労務不能に関する意見や医学的所見を基に、支給の可否や継続を審査します。したがって、病名がAからBに変わったとしても、医師が「病名Bにより、引き続き労務不能である」と証明すれば、傷病手当金の支給は継続される可能性が高いと言えます。
逆に言えば、たとえ病名が変わらなくても、医師が「労務可能」と判断すれば、傷病手当金は支給されなくなります。あくまで「労務不能状態の継続」とその医学的証明が、受給継続の鍵を握っていると理解しておきましょう。
病名変更があった場合の傷病手当金申請書の書き方
傷病手当金の受給中に病名が変更された場合、申請書の書き方に戸惑う方もいらっしゃるでしょう。しかし、正しい情報を記載することで、スムーズな審査と継続的な受給につながります。ここでは、医師が記入する「療養担当者記入用」と、被保険者(本人)が記入する箇所それぞれのポイントを詳しく解説します。
医師が記入する「療養担当者記入用」のポイント
傷病手当金の申請において、医師による「療養担当者記入用」の書類は、労務不能であることの医学的な証明として極めて重要です。特に病名変更があった際は、その経緯や変更後の状態を正確に記載してもらう必要があります。
労務不能と判断した医学的所見欄
この欄は、保険者が労務不能の状態を判断するための重要な根拠となります。病名が変更された場合、なぜ当初の病名から変更になったのか、そして変更後の病名によっても引き続き労務に服することができない医学的な理由を具体的に記載してもらうことが重要です。単に変更後の病名を記載するだけでなく、症状の経過や検査結果などを踏まえ、労務不能状態が継続していることを明確に示してもらうよう、事前に医師とよく相談しておきましょう。
傷病名欄の記載について
傷病名欄には、診断された病名を正確に記載する必要があります。病名が変更になった場合の記載方法については、いくつかのパターンが考えられます。
保険者(加入している健康保険組合や協会けんぽ)によっては、当初の傷病名と変更後の傷病名の両方を記載するよう求められる場合があります。一方で、変更後の傷病名のみの記載で良いとされる場合や、追記の形式を指定される場合もあります。そのため、可能であれば事前に保険者に確認し、その指示を医師に伝えるか、医師に保険者の指示を確認してもらうことが最も確実です。
複数の病名が関連している場合は、主たる傷病名と従たる傷病名を区別して記載してもらうことも、審査をスムーズに進める上で役立ちます。以下に記載のポイントをまとめます。
項目 | 記載のポイント例 |
---|---|
当初の傷病名 | 診断年月日とともに正確に記載されているか確認します。(例:〇年〇月〇日診断 〇〇病) |
変更後の傷病名 | 新たに診断された年月日とともに記載します。保険者の指示に応じて、当初の病名との関連性や変更経緯がわかるように記載してもらうことが望ましい場合があります。(例:「当初の〇〇に加え、△△を併発(〇年〇月〇日診断)」、「〇〇の経過観察中に□□と診断変更(〇年〇月〇日)」など) |
発病または負傷の原因 | 病名変更に伴い、原因がより明確になった場合や、当初の原因とは異なる要因が判明した場合は、その旨も正確に記載してもらいます。 |
症状・経過・治療内容 | 病名変更に至った症状の変化や検査結果、変更後の治療方針などを具体的に記載してもらいます。労務不能の判断根拠と整合性が取れていることが重要です。 |
被保険者(本人)が記入する際の注意点
申請書の被保険者記入欄も、病名変更があった場合には注意が必要です。医師の記載内容との整合性を保ちつつ、ご自身の状況を正確に伝えることが大切になります。
特に注意したいのは、「請求期間」、「仕事の内容」、「療養のため休んだ期間中の状況(症状の経過など)」の欄です。
- 請求期間:病名が変更された期間も含め、医師が労務不能と証明した期間内で、実際に休業した期間を正確に記載します。
- 仕事の内容:変更後の病名や症状によって、申請期間中に従事していた(または従事する予定だった)業務が引き続き行えないことを具体的に説明します。「体調不良のため」といった抽象的な表現ではなく、「〇〇の症状(例:めまい、集中力低下など)により、以前のようなデスクワーク(または立ち仕事、運転業務など)は困難です」のように、業務内容と症状を結びつけて記載すると伝わりやすくなります。
- 療養のため休んだ期間中の状況:医師の診断内容を踏まえつつ、病名が変更になった経緯や、変更後の具体的な症状、日常生活への影響などを自身の言葉で記載します。医師記入欄の「症状・経過」と矛盾がないように注意しましょう。(例:「〇月〇日に医師から新たに△△の診断を受けました。当初の□□の症状に加え、〇〇といった症状が強く現れるようになり、終日安静が必要な状態です。」など)
申請書を提出する前には、医師が記入した「療養担当者記入用」の内容(特に労務不能期間、傷病名、症状)と、ご自身が記入した内容に齟齬がないかを必ず確認しましょう。不明な点があれば、会社の担当者や加入している健康保険組合・協会けんぽに問い合わせることも検討してください。
病名変更が傷病手当金の受給に与える影響
傷病手当金の受給中に病名が変更された場合、受給期間や支給額、そして保険者(健康保険組合や協会けんぽなど)による審査にどのような影響があるのでしょうか。ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
受給期間への影響 起算日の考え方
傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6ヶ月です。途中で出勤した日などがあっても、支給されなかった期間はカウントされず、支給された日数が1年6ヶ月に達するまで受給できます。
病名が変更された場合、この受給期間の起算日(カウント開始日)がどうなるかが重要です。判断のポイントは、変更後の病気が「当初の病気と同一または関連するもの」とみなされるかどうかです。
保険者の判断 | 起算日の考え方 | 受給期間 |
---|---|---|
当初の病気と同一または関連性があると判断された場合 | 最初に労務不能となった日(当初の病気での支給開始日) | 当初の病気から通算して1年6ヶ月 |
当初の病気とは全く別の病気と判断された場合 | 変更後の病気で新たに労務不能となった日 | 変更後の病気で新たに1年6ヶ月の受給資格が発生する可能性あり(ただし、他の受給要件を満たす必要あり) |
例えば、うつ病で受給を開始し、その後、双極性障害と診断名が変わった場合、精神疾患という大きな括りや症状の連続性から「関連疾病」と判断され、起算日はうつ病で最初に受給を開始した日のままとなる可能性が高いです。一方、当初は腰痛で受給していた方が、全く別の原因でがんが見つかり労務不能となった場合は、別の病気として新たな起算日が設けられる可能性があります。
ただし、この判断は最終的に保険者が行います。医師の診断書や意見書が重要な判断材料となりますが、必ずしも医師の意見通りになるとは限りません。
また、「社会的治癒」と判断された場合も、新たな起算日が設けられることがあります。社会的治癒とは、症状が改善し、相当期間にわたって通常の社会生活や就労が可能であった状態を指します。この場合、再発したとしても新たな傷病として扱われる可能性があります。(社会的治癒については、後の章で詳しく解説します。)
支給額への影響はあるのか
傷病手当金の1日あたりの支給額は、原則として以下の計算式で算出されます。
支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × (2/3)
この計算式の通り、支給額は支給開始日以前の標準報酬月額に基づいて決定されます。病名が変更されたこと自体が、過去の標準報酬月額を変えるわけではありません。
したがって、病名変更のみを理由として、傷病手当金の支給日額が直接的に変わることは基本的にありません。
ただし、以下のようなケースでは結果的に支給額が変わる可能性があります。
- 病名変更が「全く別の病気」と判断され、新たな支給開始日が設定された場合:新しい支給開始日を基準に標準報酬月額が再計算されるため、その間の給与変動などにより支給額が変わることがあります。
- 一度復職し、その後、変更後の病名(または関連する病名)で再度労務不能となり、支給が再開された場合:復職期間中の給与変動により、再開時の標準報酬月額が以前と異なっていれば、支給額が変わることがあります。
あくまで、病名変更そのものではなく、支給開始日の変更やそれに伴う標準報酬月額の変動が影響する点に注意が必要です。
審査への影響 同一疾病や関連疾病と判断されるか
病名変更があった場合の傷病手当金申請において、保険者はその変更内容を審査します。特に重要なのが、変更後の病名が、当初の労務不能の原因となった傷病と「同一」または「医学的に相当因果関係がある(関連性がある)」と判断されるかという点です。
この判断は、前述の「受給期間(起算日)」に直結するため、非常に重要です。
保険者が審査する際の主な判断材料は以下の通りです。
- 医師の診断書・意見書:傷病手当金支給申請書の「療養担当者記入用」に記載される傷病名、発病年月日、労務不能と判断した医学的所見などが最も重要な資料となります。
- 症状の経過や連続性:当初の症状から変更後の症状への移行に連続性があるか、医学的に見て自然な経過と言えるか。
- 治療内容の連続性:治療方針や処方薬などに継続性があるか。
審査の結果、保険者の判断は以下のようになります。
保険者の判断 | 受給への影響 |
---|---|
同一疾病または関連疾病 | 受給期間は当初の起算日から通算される。支給は継続されるが、新たな受給期間は発生しない。 |
全く別の疾病 | 新たな傷病として扱われ、新しい起算日が設定される可能性がある。他の受給要件(待期期間の完成など)を満たせば、新たに1年6ヶ月の受給資格が発生する可能性がある。 |
例えば、当初「胃潰瘍」で申請し、その後の検査で「胃がん」が原因であることが判明した場合、医学的な関連性が高いと判断され、「関連疾病」として扱われる可能性が高いでしょう。この場合、起算日は胃潰瘍で最初に労務不能となった日から通算されます。
保険者の判断はケースバイケースであり、個別の状況によって異なります。そのため、申請書の正確な記載と、必要に応じて医師や保険者に状況を丁寧に説明することが重要になります。
傷病手当金の病名変更に関してよくある疑問
傷病手当金の受給中に病名が変わった場合、様々な疑問が生じることがあります。ここでは、よくある疑問とその回答について解説します。
複数の病名がある場合はどう記載する?
傷病手当金の申請書には、労務不能の原因となっている傷病名を記載する必要があります。複数の病気を抱えている場合、どの病名を記載すべきか迷うかもしれません。
原則として、その時点で最も労務不能の原因となっている主たる傷病名を記載します。ただし、複数の病気が複合的に影響して労務不能となっているケースも少なくありません。このような場合は、自己判断せず、必ず医師に相談してください。
医師は、「療養担当者記入用」の傷病名欄に、医学的な判断に基づいて労務不能の原因である傷病名を記載します。関連する病名がある場合は、主たる傷病名と併せて記載されることもあります。申請者本人が記入する欄も、医師の診断内容と齟齬がないように注意深く記載しましょう。
不明な点があれば、加入している健康保険組合や協会けんぽに問い合わせることも有効です。
精神疾患から身体疾患への病名変更は?逆の場合は?
当初はうつ病などの精神疾患で傷病手当金を受給していた方が、その後、別の身体疾患(例えば、がんや内臓疾患など)が判明し、そちらが労務不能の主たる原因となるケースがあります。逆のパターン、つまり身体疾患から精神疾患へ主たる病名が変わるケースも考えられます。
このような場合でも、変更後の病気によって引き続き労務不能な状態であると医師が証明すれば、原則として傷病手当金の受給は継続されます。傷病手当金は、病名の種類で支給が決まるのではなく、病気やケガによって仕事ができない状態(労務不能)であるかどうかが最も重要な判断基準となるためです。
ただし、審査においては、変更前後の病気の関連性が考慮される場合があります。全く関連のない別の病気と判断された場合、新たな傷病による申請として扱われ、受給期間の起算日が変わる可能性もゼロではありません(詳しくは「受給期間への影響 起算日の考え方」の章をご参照ください)。特に、症状が改善傾向にあった後に全く別の病気が発生した場合は注意が必要です。
いずれにしても、医師による労務不能の証明が不可欠ですので、診断内容や労務不能と判断する医学的根拠について、医師と十分にコミュニケーションをとることが重要です。
会社への報告は必要か
傷病手当金の申請手続きは、多くの場合、会社を経由して行われます。申請書には「事業主記入用」の欄があり、休職期間中の賃金の支払い状況などについて会社の証明が必要です。
そのため、病名変更があった場合、手続きを円滑に進める観点からは、会社(通常は人事部や総務部、直属の上司など)に報告しておくことが望ましいと言えます。特に、当初想定していた療養期間に変更が生じる可能性がある場合などは、早めに伝えておく方が良いでしょう。
ただし、病名の詳細まで報告する法的な義務はありません。病名は非常にデリケートな個人情報です。どこまで具体的に伝えるかは、ご自身の判断によります。労務不能の状態が継続していること、療養期間の見込みなどを伝えるだけでも、手続き上は問題ないケースが多いです。
会社への報告に関する考え方を以下にまとめます。
報告の側面 | 必要性・考え方 | 補足 |
---|---|---|
手続き上の必要性 | 会社経由で申請する場合、手続きを円滑に進めるために報告が望ましい | 事業主記入欄の記載依頼、休職期間の確認など |
病名の詳細報告 | 法的な報告義務はない。プライバシーに関わるため慎重に判断。 | 労務不能であること、療養期間の変更有無などを伝えるだけでも良い場合が多い。 |
就業規則等 | 会社の休職規定などで報告が求められる場合があるため、確認が必要 | 不明な場合は人事・総務担当者に相談。 |
コミュニケーション | 円満な職場復帰のためにも、状況に応じて適切な情報共有が有効な場合がある | 伝える範囲は主治医とも相談すると良い。 |
会社によっては、休職に関する社内規定で病状の報告について定めがある場合もあります。ご自身の会社の就業規則や関連規定を確認し、不明な点は担当部署に確認するようにしましょう。
傷病手当金の病名変更における注意点
傷病手当金の受給中に病名が変更になった場合、手続き自体は比較的シンプルですが、いくつか注意すべき点があります。スムーズな受給継続のため、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。
医師との連携を密にする
傷病手当金の申請において、医師による「労務不能」であることの証明は最も重要な要素です。病名が変更になった際は、特に以下の点について医師と十分にコミュニケーションをとることが不可欠です。
- 病名変更の経緯と理由の共有: なぜ病名が変更になったのか、現在の症状はどうなのかを正確に伝え、医師に状況を正しく理解してもらいましょう。
- 労務不能状態の継続性の確認: 病名が変わっても、引き続き労務不能な状態が続いていることを医師に診断・証明してもらう必要があります。当初の病気から新しい病気へ、症状が一貫して続いているのか、あるいは関連性があるのかなどを確認しましょう。
- 申請書への正確な記載依頼: 医師が記入する「療養担当者記入用」の「労務不能と判断した医学的所見」欄などに、病名変更の経緯や、変更後の病名でも労務不能であると判断した具体的な理由を記載してもらうようお願いしましょう。これにより、保険者(健康保険組合や協会けんぽ)の審査がスムーズに進む可能性が高まります。
医師との良好な関係と円滑なコミュニケーションが、病名変更時の傷病手当金申請を成功させる鍵となります。
申請書の記載内容を正確に確認する
傷病手当金支給申請書は、保険者に提出する正式な書類です。特に病名変更があった場合は、記載内容に誤りや矛盾がないか、提出前に細心の注意を払って確認する必要があります。
<確認すべき主なポイント>
- 医師記入欄(療養担当者記入用):
- 傷病名: 正式な病名が、変更後の診断に基づいて正確に記載されているか。複数の病名がある場合は、主たる傷病名と関連する傷病名が適切に記載されているか。
- 発病年月日: 当初の病気の発病年月日か、変更後の病気の診断日かなど、医師の判断を確認しましょう。(通常は最初に労務不能となった原因の傷病の発病年月日を記載します)
- 労務不能と認めた期間: 申請期間と一致しているか。
- 労務不能と判断した医学的所見: 病名が変更されても労務不能であると判断した根拠が具体的に記載されているか。病名変更の経緯に触れられていると、より丁寧です。
- 被保険者記入欄:
- 申請内容: 申請期間、振込先口座などに誤りはないか。
- 仕事内容や休んだ状況: 事実に基づいて正確に記載されているか。
- 医師記入欄との整合性: 医師の証明内容と矛盾する記載がないか。
提出前に必ず申請書のコピーを取り、保管しておくことを強く推奨します。万が一、問い合わせがあった場合や、後日確認する際に役立ちます。
加入する健康保険組合や協会けんぽへの確認も検討
傷病手当金の審査基準や運用は、加入している健康保険組合や協会けんぽによって、細部で異なる場合があります。病名変更という通常とは異なるケースでは、事前に保険者に問い合わせて、手続きの方法や注意点を確認しておくと安心です。
<確認・相談を推奨する事項>
- 病名変更があった場合の申請書の具体的な書き方
- 追加で必要となる書類の有無
- 病名変更が審査に与える影響(特に、当初の病気との関連性が低い場合)
- 複数の病名がある場合の記載方法や扱いの詳細
不明な点や不安な点は、遠慮なく担当窓口に質問しましょう。事前に確認することで、書類の不備による再提出の手間や、審査の遅延を防ぐことができます。
加入している健康保険 | 主な問い合わせ先 |
---|---|
全国健康保険協会(協会けんぽ) | お住まいの都道府県の協会けんぽ支部 |
組合管掌健康保険(健康保険組合) | ご加入の健康保険組合 |
共済組合 | ご加入の共済組合 |
※具体的な連絡先は、保険証や勤務先、各保険者のウェブサイトなどでご確認ください。
病名変更が社会的治癒と判断される可能性
注意したい点として、「社会的治癒」と判断される可能性が挙げられます。「社会的治癒」とは、医学的には完治していなくても、症状が改善し、相当期間(明確な基準はありませんが、一般的に数ヶ月~数年単位)にわたって自覚症状も他覚所見もなく、通常の社会生活(就労など)を送れる状態になった場合、法律上は治癒したものとみなす考え方です。
病名変更が、「当初の病気は社会的治癒に至り、その後、新たな別の病気が発生した」と保険者に判断された場合、傷病手当金の受給資格に影響が出る可能性があります。
<社会的治癒と判断された場合の影響>
- 受給期間の起算点がリセットされる可能性: 新たな病気として扱われるため、支給開始日から通算して1年6ヶ月の受給期間が、その新たな病気の発生日から再度カウントされる可能性があります。(ただし、同一または関連疾病とみなされれば通算されます)
- 同一疾病での再申請が難しくなる可能性: 一度社会的治癒と判断されると、その後、当初の病気が再発しても、原則として同一疾病による傷病手当金の再申請は認められにくくなります。
<社会的治癒と判断されやすいケース(例)>
判断要素 | 社会的治癒と判断されやすい傾向 |
---|---|
症状・病名 | 当初の病名と変更後の病名の関連性が低い場合(例: うつ病 → 骨折) |
治療状況 | 病名変更前に、自己判断で長期間通院や服薬を中断していた期間がある場合 |
就労状況 | 病名変更前に、一定期間、通常の勤務に復帰していた期間がある場合 |
社会的治癒と判断されることを避けるためには、病名が変更になったとしても、症状が一貫して継続しており、労務不能な状態が続いていることを、医師に申請書へ明確に記載してもらうことが極めて重要です。特に、当初の病気と変更後の病気に関連性がある場合は、その旨を医学的所見として具体的に記述してもらうよう依頼しましょう。
もし、社会的治癒について不安がある場合は、事前に保険者や社会保険労務士などの専門家に相談することも有効な手段です。
まとめ
傷病手当金の受給中に病名が変更となっても、原則として再申請は不要です。最も重要なのは、変更後の病名であっても医師が引き続き「労務不能」であると証明することです。申請書の「療養担当者記入用」では、労務不能と判断された医学的所見を正確に記載してもらうことが鍵となります。病名変更は受給期間の起算日や、同一・関連疾病と判断されるかどうかの審査に影響する可能性もあるため注意が必要です。不明点は医師や加入先の健康保険組合、協会けんぽに確認し、正確な手続きを行いましょう。
退職給付金の受給手続きを行うためには、正確な手続きと専門的な知識が必要です。
しかし、手続きの複雑さや専門知識の不足でお困りの方も多いのではないでしょうか?「退職のミカタ」なら、業界最安レベルの価格で安心してご利用いただけます。「退職のミカタ」のコンテンツを利用することで、退職前から退職後まで、いつ・どこで・何をすればいいのかを、確認しながら進めていくことができます。退職給付金についてお困りの方は、ぜひ「退職のミカタ」のご利用をご検討ください!
コメント