突然の失業は、経済的な不安を大きくするものです。そんな時、頼りになるのが失業手当です。この制度を利用できれば、生活の支えとなり、次の仕事を探す余裕も生まれます。
しかし、失業手当を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。「どんな条件をクリアすればいいのか」「いくらもらえるのか」「どれくらいの期間もらえるのか」など、疑問は尽きないでしょう。
この記事では、失業手当の受給資格、金額の計算方法、受給期間など、知っておくべき情報を分かりやすく丁寧に解説します。雇用保険の基本手当、特定受給資格、特定理由離職者、給付制限、待機期間、再就職手当などについても詳しく説明しますので、安心して次のステップへ進むための準備として、ぜひご活用ください。
この記事を読むことで、失業手当に関する疑問を解消し、スムーズな手続きと生活設計が可能になります。
失業手当を受けるための条件
失業手当(正式には雇用保険の基本手当)を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。大きく分けて「受給資格」と、実際に受給するための細かい「受給条件」があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
失業手当の受給資格
受給資格には、一般受給資格、特定受給資格、特定理由離職者の3種類があります。
一般受給資格
一般受給資格を得るには、以下の条件を満たす必要があります。
- 離職前1年間で、雇用保険の被保険者期間が6ヶ月以上あること(被保険者期間とは、雇用保険に加入していた期間のことです)。
- 離職の理由が「会社都合」または「正当な自己都合」であること。
- 積極的に求職活動を行っていること(ハローワークへの求職申込み、求人への応募など)。
- 労働の意思と能力があること(病気やケガなどで働けない場合は受給できません)。
「正当な自己都合」とは、結婚、出産、育児、介護、転居などのやむを得ない理由による退職のことです。 一方、自己都合退職の場合でも、会社都合退職と同等の扱いとなる「特定受給資格」と「特定理由離職者」があります。
特定受給資格
特定受給資格とは、以下のいずれかに該当する方で、自己都合で退職した場合でも、一般受給資格者とほぼ同等の給付を受けられる資格のことです。
番号 | 特定受給資格の内容 |
---|---|
1 | 倒産・解雇のおそれのある会社を離職した場合 |
2 | 賃金が支払われないなどの正当な理由で離職した場合 |
3 | 会社からの嫌がらせなどにより離職を余儀なくされた場合 |
4 | 妊娠、出産、育児、介護などの理由で離職した場合 |
5 | 通勤が困難になったなどの理由で離職した場合 |
6 | その他、やむを得ない理由で離職した場合 |
特定理由離職者
特定理由離職者とは、以下の理由で離職した方のことで、自己都合退職であっても、より手厚い給付を受けられます。
- 事業主の事業活動の縮小等に伴う解雇
- 契約期間満了による離職等
特定理由離職者の場合、待機期間が短縮され、給付日数も長くなるなどの優遇措置があります。
厚生労働省:雇用保険の基本手当について
失業手当の受給条件を満たさないケース
以下の場合は、失業手当の受給条件を満たさないため、受給できません。
- 自己都合で退職し、かつ特定受給資格や特定理由離職者に該当しない場合(ただし、待機期間満了後に就職活動を行っている場合は受給できる可能性があります)
- 懲戒解雇や自己都合による退職の場合で、正当な理由がないと判断された場合
- 労働の意思と能力がない場合(病気、ケガ、妊娠・出産、育児、介護など)
- 積極的に求職活動を行っていない場合
- 偽りその他不正な行為によって失業手当を受給しようとした場合
失業手当の金額はいくら?計算方法を解説
失業手当の金額は、基本手当日額と所定給付日数を掛け合わせて算出されます。基本手当日額は、離職前の賃金をもとに計算され、上限額と下限額が設定されています。また、年齢や扶養家族の人数によって加算される場合があります。
基本手当日額の計算方法
基本手当日額は、離職前の6ヶ月間の賃金総額を180で割って算出します。これを「賃金日額」といいます。ただし、賃金日額が上限額を超える場合は上限額が、下限額を下回る場合は下限額が適用されます。
賃金日額 = (離職前6ヶ月間の賃金総額) ÷ 180
具体的な計算式は以下のとおりです。
- 賃金日額 × 45/100(60歳未満の場合)
- 賃金日額 × 60/100(60歳~64歳の場合)
- 賃金日額 × 55/100(65歳以上の場合)
計算結果に1円未満の端数がある場合は切り捨てられます。
失業手当の上限額と下限額
失業手当の基本手当日額には、上限額と下限額が設定されています。令和5年10月1日現在の上限額と下限額は以下のとおりです。
区分 | 上限額 | 下限額 |
---|---|---|
一般の求職者 (年齢にかかわらず) | 9,740円 | 3,612円 |
季節労働者 | 7,870円 | 2,886円 |
上限額と下限額は、物価や賃金水準の変化に応じて定期的に見直されます。厚生労働省のウェブサイトで最新の情報を確認するようにしましょう。
年齢や扶養家族の人数による加算
基本手当日額は、年齢や扶養家族の人数によって加算される場合があります。60歳以上65歳未満の場合は賃金日額の60%、65歳以上は55%が基本手当日額となります。また、扶養家族がいる場合は、人数に応じて基本手当日額に加算額が支給されます。具体的な加算額は、厚生労働省のウェブサイトなどを参照ください。
これらの情報をもとに、ご自身の失業手当の金額を計算してみましょう。 計算が難しい場合は、ハローワークに相談すれば丁寧に教えてもらえます。
失業手当の受給期間はどれくらい?
失業手当の受給期間は、被保険者期間や離職理由、年齢などによって異なります。一般的には、被保険者期間が長ければ長いほど、受給期間も長くなります。また、自己都合退職よりも会社都合退職の方が、受給期間は長くなります。さらに、年齢が高いほど受給期間が長くなる傾向にあります。
失業手当の受給期間の計算方法
失業手当の受給期間は、以下の要素に基づいて計算されます。
- 被保険者期間:雇用保険の被保険者であった期間の長さ。過去2年間で雇用保険に加入していた期間が通算12ヶ月以上必要です。被保険者期間が長くなるほど、受給できる期間も長くなります。
- 離職理由:自己都合退職か会社都合退職かによって、受給期間が異なります。会社都合退職の場合、自己都合退職よりも受給期間が長くなります。特定受給資格者や特定理由離職者は、さらに長い期間受給できます。
- 年齢:年齢が高いほど、受給期間が長くなる傾向にあります。特に55歳以上の方は、受給期間が長くなる場合があります。
具体的な受給日数は、ハローワークで確認できます。また、厚生労働省のウェブサイトにも情報が掲載されています。
被保険者期間 | 年齢 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
---|---|---|---|
10年以上 | 45歳未満 | 90日 | 150日 |
10年以上 | 45歳~54歳 | 120日 | 180日 |
10年以上 | 55歳以上 | 150日 | 210日 |
5年以上10年未満 | 45歳未満 | 90日 | 120日 |
5年以上10年未満 | 45歳~54歳 | 90日 | 150日 |
5年以上10年未満 | 55歳以上 | 120日 | 180日 |
1年以上5年未満 | どの年齢でも | 90日 | 90日 |
上記の表はあくまで一例であり、実際の受給日数は個々の状況によって異なります。詳しくはハローワークにご確認ください。
自己都合退職と会社都合退職で期間は変わる?
自己都合退職と会社都合退職では、失業手当の受給期間が異なります。一般的に、会社都合退職の方が自己都合退職よりも受給期間が長くなります。これは、会社都合退職の場合は、労働者の責めに帰すべき事由によらず離職したとみなされるためです。自己都合退職の場合、2ヶ月の給付制限期間が設けられますが、会社都合退職の場合は、この待機期間が7日間と短くなります。
特定受給資格者の受給期間
特定受給資格者とは、倒産・解雇など、自分の意思とは関係なく離職した人のことです。特定受給資格者の受給期間は、一般の受給者よりも長くなります。具体的な日数は、被保険者期間や年齢によって異なりますが、最大で330日間の受給が可能です。詳しくはハローワークにお問い合わせください。
失業手当を受給する際の注意点
失業手当を受給するには、いくつかの注意点があります。これらの注意点を守らないと、失業手当がもらえなくなったり、受給額が減額されたりする可能性があります。しっかりと確認しておきましょう。
待機期間について
失業手当は、離職した日からすぐに支給されるわけではありません。離職日から7日間は「待機期間」と呼ばれ、この期間中は失業手当は支給されません。これは、すぐに再就職できる可能性がある期間として設けられています。ただし、特定受給資格者や特定理由離職者は待機期間が3日間と短くなっています。
給付制限について
自己都合で退職した場合、待機期間満了後さらに2ヶ月間は「給付制限期間」 となります。この期間は、原則として失業手当は支給されません。これは、安易な離職を防ぎ、就職活動を促すための制度です。給付制限期間中は、積極的に求職活動を行うことが求められます。ただし、特定理由離職者には給付制限はありません。
給付制限の免除
自己都合退職であっても、やむを得ない理由で退職したと認められる場合は、給付制限が免除される場合があります。例えば、会社倒産に伴う解雇、結婚、妊娠・出産、育児、介護、病気、転勤、ハラスメントなどが挙げられます。これらの理由で退職した場合は、ハローワークに相談し、必要な書類を提出することで給付制限の免除が認められる可能性があります。
再就職手当について
失業手当の受給期間が残っている状態で再就職した場合、「再就職手当」 が支給される場合があります。これは、早期の再就職を促進するための制度です。再就職手当の支給額は、残りの受給期間の日数や賃金などによって異なります。再就職手当を受給するには、所定の手続きが必要です。再就職が決まったら、速やかにハローワークに届け出ましょう。
再就職手当の種類と受給条件
手当の種類 | 受給条件(主なもの) |
---|---|
早期再就職手当 | 所定給付日数の3分の2以上残っている状態で再就職し、1年以上雇用されることが見込まれる場合 |
特定再就職手当 | 所定給付日数の3分の1以上残っている状態で再就職し、6ヶ月以上雇用されることが見込まれる場合 |
常用就職支度手当 | 雇用保険の被保険者期間が短い人が、安定した職業に就いた場合 |
これらの注意点以外にも、失業手当の受給には様々なルールがあります。詳しくは、お近くのハローワークにお問い合わせください。また、厚生労働省のウェブサイトでも詳しい情報が公開されていますので、そちらも参考にしてください。
失業手当に関するよくある質問
失業手当に関するよくある質問をまとめました。手続き前に疑問を解消しておきましょう。
失業手当はいつからもらえる?
失業手当は、離職日の翌日から7日間の待機期間が経過し、さらに3回の認定日を過ぎた後に初めて支給されます。つまり、最短でも離職日から約1ヶ月後になります。ただし、給付制限がかかる場合は、支給開始がさらに遅れます。具体的な支給日は、ハローワークで確認しましょう。
アルバイトをしながら失業手当はもらえる?
アルバイトをしながら失業手当を受給することは可能です。ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 週20時間以内(1日の労働時間が8時間未満)の労働であること
- 働く意思と能力があるにもかかわらず、就職活動をしているにもかかわらず仕事が見つからない状態であること
収入によっては失業手当の額が減額されたり、支給されない場合もあります。アルバイトを始める前に、必ずハローワークに相談しましょう。
参考:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険の手続き
副業をしている場合は?
副業をしている場合でも、失業手当を受給できる可能性はあります。ただし、アルバイトと同様に、労働時間や収入によっては失業手当の額が減額されたり、支給されない場合があります。また、副業の内容によっては、失業とみなされない場合もあります。副業の内容や収入、労働時間などをハローワークに正確に申告することが重要です。
副業の種類と失業手当
副業の種類 | 失業手当への影響 | 注意点 |
---|---|---|
パート・アルバイト | 労働時間と収入に応じて減額または支給停止の可能性あり | 週20時間以内(1日の労働時間が8時間未満)であれば原則として可 |
フリーランス | 業務内容と収入に応じて減額または支給停止の可能性あり。場合によっては失業とみなされないことも。 | 業務内容と収入を正確に申告する必要あり |
個人事業主 | 事業の規模や収入に応じて減額または支給停止の可能性あり。場合によっては失業とみなされないことも。 | 事業の規模と収入を正確に申告する必要あり |
不安な場合は、副業を始める前、または失業手当の受給手続き前に、ハローワークに相談することをおすすめします。 状況に応じて適切なアドバイスを受けることができます。
失業手当の申請に必要な書類は?
失業手当の申請には、以下の書類が必要です。事前に準備しておくと手続きがスムーズに進みます。
- 離職票-1、離職票-2
- 雇用保険被保険者証
- 写真(縦3cm×横2.5cm)2枚
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑(認印可)
- 通帳またはキャッシュカード
必要書類は状況によって異なる場合がありますので、ハローワークで確認してください。
失業認定申告書とは?
失業認定申告書は、失業の状態が継続していること、求職活動を行っていることを証明するための書類です。認定日にハローワークに提出します。求職活動の実績を具体的に記入する必要があるので、事前に求職活動の内容を記録しておきましょう。
失業手当を受給中に引っ越しをする場合は?
失業手当を受給中に引っ越しをする場合は、引っ越し前に必ずハローワークに届け出ましょう。 管轄のハローワークが変わる場合は、転出手続きと転入手続きが必要になります。
まとめ
この記事では、失業手当の受給条件、金額、期間、注意点などについて詳しく解説しました。
失業手当を受けるには、一定の受給資格を満たし、所定の手続きを行う必要があります。受給資格は、一般受給資格と特定受給資格の2種類があり、それぞれ条件が異なります。
また、自己都合退職と会社都合退職でも受給期間が異なるため注意が必要です。失業手当の金額は、基本手当日額に基づいて計算され、年齢や扶養家族の人数によって加算される場合があります。受給期間は、雇用保険の加入期間や離職理由によって異なります。
さらに、待機期間や給付制限といった注意点も理解しておくことが重要です。失業手当に関する疑問は、ハローワークに相談することで解決できます。これらの情報を活用し、スムーズに失業手当を受給しましょう。
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